ソーシャルメディア時代のリスクマネジメント

ソーシャルメディア関連を専門とするリスクコンサルタントが、企業のリスクマネジメントについて書いています。

「炎上」と「論議」の違い

全部「炎上」でくくってしまっていいのか

「ネット炎上」とは、対象となる人や企業・団体による言動に対して、ネット上で多数の批判や非難、罵倒などが寄せられている状態のことを指します。

 

その際、その批判や非難、罵倒の陰にある、対象に対する肯定的な意見や、ネガティブな見解に対する反論についてはあまり考察されることなく、全部ひとくくりにして「炎上」という言葉で片付けられてしまいます。

ですが、それはかなり雑なくくり方ではないでしょうか。

 

例えば、批判の声が上がることを覚悟の上で企業がメッセージを発信する、ということは、場合によっては有ってしかるべきです。

そのような時に、賛否両論あったからと言ってそれを「炎上」の一言で片付けてしまって本当に良いのか。

 

その典型的な例が、2016年に公開されたポーラの人材募集広告動画です。

www.youtube.com

 

「この国は、女性にとって発展途上国」という刺激的なフレーズで、豪速球ストレートなメッセージを投げかける動画は賛否両論を巻き起こしました。

 

たった60秒の動画で伝えられるメッセージは、どうしても粗くなりがちです。その粗さが故に、様々な批判をするということも可能です。

この動画に対しても、

「男だってつらいんだ」

という的外れな批判から、

「そういうポーラ自身だって、役員や管理職に女性が少ないじゃ無いか」

という、この動画で訴えていることと論点をズラした批判まで、様々な批判が寄せられました。

他方、共感や賞賛の声もそれ以上に沸き起こっています。

このような状況を、考えの浅いおふざけPR動画が元で全面的に叩かれたようなケースと同様に「炎上」などと呼んでいいのでしょうか。

 

ポーラ宣伝部長(当時)の渡邉和子さんは、取材に対して当時を振り返って、以下のように述べています。

「それに対して、CMを引き下げるという考えはありませんでした」

「第1CMでポーラが発信したメッセージは、押し付けでも結論でもなく問いです。こういうことが起こっていますが、みなさんどう思われますか、と。それに対するコメントは、ポジティブ・ネガティブどちらも、みなさんが思われたことであり、 ご意見だと思っていましたから」

https://www.businessinsider.jp/post-100743

この場合、批判を受けることを想定していたわけです。この動画に対する批判の構造こそが、ポーラとして向き合うべき社会状況なのだという強い意志すらも垣間見得ます。

 

flaming」と「controversy

ポーラのこの動画への反応のように、批判と賞賛が盛り上がった状態のことを形容する言葉として、英語には「controversial」という言葉があります。「物議をかもす」とか「議論を引き起こす」というような意味です。これの名詞形が「controversy」で、「論議」などと訳すようです。

他方、全面的に叩かれているような場合にはこの言葉を用いず、「flaming」、まさに「炎上」という言葉を用いるようです。

 

上記のポーラのケースは「flaming」ではなく「controversy」と呼ぶべきものであり、状況が許すなら、多くの企業でも行う価値のある取り組みではないかと思います。

 

実際、海外ではちょっと前からそういった事例がポツポツと見られるようになってきました。

特に今年に入って大きな議論を呼んだのが、男性向けの髭剃り用カミソリを事業の一番の柱としているジレットが公開したCMでした。

ジレットのCMが問い掛ける新たな”男らしさ”、全米で大紛糾

ジレットの炎上CM、幹部が明かす制作の意図 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

 

ジレットはこれまで「男らしさ」を前面に押し出したブランドイメージを構築してきましたが、本CMでは「男らしさって、常に素晴らしいものなんだっけ?」という疑問を投げかけ、「有害な男らしさ」に対して警鐘を鳴らすという、思い切ったメッセージを発信しました。

当然、これに反発する動きもあったりなど、まさしく「controversy」状態でした。

ジレットのCMが不快と炎上!激怒した俳優達と内容をシェア | スポーツマニアワン!

 

この状態を日本であればおそらく「炎上」と表現するはずですし、ここまでのメッセージを投げかける企業は日本では皆無ではないかと思います。もちろん、「だから日本の企業はダメだ」というようなことを言うつもりは全くありません。企業は社会変革を促すのが第一義なのではなく、社会に適合しつつ収益を最大化するのが目的ですから、「controversy」な状況を作ることが自社に短期的にも中長期的にも益が無いと判断するならば、そのようなことをする必要は無いのです。

とはいえ、今の日本企業は「flaming」と「controversy」を一緒くたにして「炎上」と呼び、批判を怖がりすぎているのではないでしょうか。

 

controversy」を恐れない

本ブログの一番最初の記事にも書きましたが、リスクを「ヘッジ」することと「マネジメント」することは、同義ではありません。

常に「ヘッジ」しか考えなければ、短期的なリスクは低減できても、中期的にはジリ貧に陥ります。

 

先にも述べた通り、企業は収益を最大化するのを目的としていますが、一方で、企業に対して社会の公器としての立ち振る舞いが強く求められる現代において、企業の姿勢をメッセージとして発信することの意義も考慮すべきでしょう。

 

もちろん、メッセージを投げかけるからには、発信者はそのメッセージの内容に対して責任が生じます。

イメージ先行の薄っぺらいメッセージであれば、すぐに底の浅さがバレて批判に晒されるのがソーシャルメディアの恐ろしいところです。なにしろソーシャルメディアは、その筋の専門家たちもたくさん利用しており、そのような専門家たちに「そんな底の浅いアプローチは却って害悪だ」と指摘される可能性が高いからです。ジェンダー関連で炎上に至っているプロモーションも、このパターンが非常に多いのが実情です。

 

つまり、メッセージを投げかけるからには、そもそもの社会課題をふわふわしたイメージで捉えて薄っぺらいクリエイティブに落とし込むのではなく、自分たちの中で芯から腹落ちさせなければなりません。それがメッセージの発信者としての最低限の責任です。

その上で発したメッセージであれば、「controversy」が発生しても恐れることはありません。「実際に取り組むべき社会課題がそこに有ることを、自分たちはよく知っている」と胸を張って言えるのですから。

逆に、ふわふわしたイメージだけでプロモーションを設計してしまった場合、ロジカルに反論されてしまうと「そんなつもりはありませんでした。ごめんなさい」としか言えなくなります。

メッセージを投げかけるには、そのメッセージに内包される社会課題について深く理解し、同時に、そのメッセージに対する様々な反論も予想しながら取り組む必要があります。その上であれば、プロモーションとしての効果も十分に担保することが期待できるでしょう。

 

 

 

「バイトテロ」の話題が流行っているので

「バイトテロ」の復活

飲食店やコンビニエンスストア、飲食品宅配店などのアルバイトスタッフが、業務中に自分たちの悪質な「おふざけ」の様子を写真や動画におさめ、それをソーシャルメディアにアップロードすることが発端となり、ネット炎上に至るケースがあります。

アルバイトスタッフによるこのような行為を「バイトテロ」と呼ぶようになったのは、この類のネット炎上が頻発した2013年からですが、2014年以降は「バイトテロ」はナリを潜めていました。

 

それが2019年に入った途端に、2013年にタイムスリップしたかのように「バイトテロ」によるネット炎上が頻発しており、連日のようにネットやテレビ、新聞などで取り上げられています。

 

このような「バイトテロ」の構造については、徳力基彦さんによる優れた論考が既にあるので、論の重複は避けたいと思います。

くら寿司動画炎上で考える、バイトテロが繰り返されてしまう理由(徳力基彦) - 個人 - Yahoo!ニュース

 

徳力さんの論考でも触れられているとおり、2019年に入ってからのバイトテロについては、様々な意見がネット上でも飛び交っています。

その中でも、企業側の責任を問う声として主だったものは、以下の2パターンでした。

 

  • 教育が不十分だからこんなことが起こるんだ。コストを惜しまずちゃんと教育しろ。
  • アルバイトに対する待遇が悪いからこんなことが起こるんだ。待遇を改善しろ。

私個人としては、この2つの批判は事態の改善に対して一面しか捉えていないように感じます。

職務上、私は企業の側に立って具体的な予防策・解決策を構築する立場にありますので、本稿ではその観点から事態の分析と対策方法について述べていきたいと思います。(社会そのもののあり方を論じても企業の担当者には解決の手がかりにならないので、ここでは論じません。)

 

教育したら防げるのか

まずは、企業の責任を問う声の1つめ。

「教育が不十分だからこんなことが起こるんだ。コストを惜しまずちゃんと教育しろ。」

という意見に妥当性があるのかについて考えていきましょう。

 

この意見を発信している方々は、店舗のアルバイトスタッフの経験はあっても、教育プログラムを企画立案する側に立ったことは無いのではないかと想像します。

私は職務上、多くの企業の危機管理部門や人事部門、フランチャイザーの店舗管理部門の方々から相談をいただくことがありますが、このご時世に教育に未着手な企業などほとんど無いからです。

アルバイトスタッフやテンポラリースタッフをたくさん雇用している企業では、2013年のバイトテロブームの際に課題意識を持ち、何らかの教育に着手しています。

その上で、どの企業においても頭を抱えている課題として、以下のようなことをよく耳にします。

 

  • 現場スタッフ(宅配スタッフや店舗スタッフなど)の入れ替わりが激しいため、教育が行き届かない。(教育を徹底しようとすると手間と金がかかりすぎる。)
  • フランチャイズ展開の場合、フランチャイザー側ではフランチャイジーのアルバイトスタッフのことは全く分からない。入社や退職のタイミングも把握できないので、ガバナンスの効かせようが無い。フランチャイジーのオーナーに「教育してください」と依頼をして、教育のための素材を渡すところまではできるが、どこまで徹底されているかまでは直接管理できない。

つまり、教育しようとしても教育機会を十分に設けられていないのではないか、という問題です。

しかしながら、そもそも問題は教育機会なのでしょうか。

 

もちろん、現場がサボタージュして教育機会を設けていない、ということであれば論外ですが、「職場で写真や動画を撮ってネットに上げるな」という単純至極なことを教えるのに、何時間もかかるということは無いはずです。であれば、問題なのは教育機会よりも、教育効果の方ではないでしょうか。

 

業務手順のような、それを覚えないと作業ができないというようなものなら教育効果が目に見えて確認できます。日々の業務の中でチェックもできますし、できていなければ注意も容易です。

ですが、行動規範のようなものはどうしても、アルバイト先で言われたからといって急に身に付くものではありません。これを読んでいるあなたも、例えば、医者に「酒をやめなさい」と言われて、即日止められる人ばかりではないでしょう。それと同じで、教育を受けても「バレなきゃ、なんてことはない」と思っていれば、抑止が難しいのです。

そうなると、教育効果についてはかなり割り引いて考えなければなりません。

 

待遇を改善したら防げるのか

次に、

「アルバイトに対する待遇が悪いからこんなことが起こるんだ。待遇を改善しろ。」

という意見に妥当性があるのか考えてみましょう。

 

このロジックに対するカウンターとして多くの人が指摘しているのが、

「待遇良くても炎上するよね。企業の公式アカウントもよく炎上してるし。」

というものです。

このロジックについては、バイトテロと企業の公式アカウントの炎上を一概に比較できないという問題があると思います。というのも、社会から求められる規範のレベル感や、投稿をする際の前提となる条件が異なりすぎているので、一概に比較できないためです。

 

そこで、この場合は、すき家のケースを紐解くことが非常に有効ではないかと考えています。アルバイトの待遇が短期間に劇的に改善した中で、アルバイトスタッフのネットでの言動がどうなったを検討することができるためです。

 

すき家は、2014年に、アルバイトスタッフ含む店舗従業員の過重労働が問題視され、「ワンオペ」という言葉が社会的に認知されるきっかけを作りました。

<すき家労働問題・上>「ワンオペは大変だね」と客に同情されたーーバイトが実態告白 - 弁護士ドットコム

<すき家労働問題・下>バイトの7割「45分以上の休憩ない」データにみる過酷な実態 - 弁護士ドットコム

 

すき家は、店舗スタッフの過重労働により、店舗スタッフの離脱が相次いだり、店舗スタッフによるネットでの告発が頻発したりなどして、店舗運営自体が難しくなり、全店舗のうち約6割の店舗で営業時間を短縮するなどの対応を余儀なくされました。

これを受けて、すき家を運営するゼンショーは、現場の待遇改善(ワンオペ解消だけでなく諸々)を宣言し、実行した結果、職場環境が改善したことによりスタッフ募集に対する応募が大幅に増え、売り上げや利益も大幅に上昇し、「ホワイト化すると経営も好循環が回り出す」という好例として話題になりました。

“ワンオペ”で叩かれた「すき家」のいま (1/2) - ITmedia ビジネスオンライン

 

しかしながら、そのすき家にして、20191月末にバイトテロが発生しています。

すき家が謝罪、従業員が店内で不適切な動画を撮影 - ねとらぼ

 

このすき家のバイトテロが、2019年のバイトテロ炎上ブームの嚆矢になった観もありますので、必ずしも待遇の良し悪しで解決する問題でも無いことは明らかです。

 

ただし、ブラック企業の権化であった当時のすき家に比べれば、バイトテロの頻度や重篤度は比較にならないぐらい軽微ですので、待遇の良し悪しが全く影響しないわけではないでしょう。

もちろん、ここでいう「待遇」は、お金の問題だけに収束しません(お金の問題も大事ですが)。大切なのは、職場に対するロイヤルティをいかに高めるのか、という観点です。「こんな店、辞めてやる!」と思っている人と「ここで長く続けたい」と思っている人では、当然、ヤンチャをする可能性が自ずと異なるでしょう。

とはいえ、全ての人間がこのような合理的判断を行えるわけではありません。合理的判断を行える程度は、個人によって大きなバラつきがあります。

そのような観点からも、待遇の改善だけで問題が解消されるわけでは無いでしょう。

 

厳しい法的措置を取れば抑止できるのか

教育や待遇改善が、無意味とは言わないまでも、それ単体で決定打とならない中で、評論家の荻上チキさんはくら寿司を運営するくらコーポレーションが201928日に宣言した「刑事、民事での法的措置について、抑止効果を期待するコメントをしています。

【音声配信】ネットリテラシー研修、それも必要だけれど……▼2019年2月11日(月)放送分(TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」)

 

荻上チキさんは、2007年にいち早くネット炎上に関する単著を出版するなど、ネット炎上に関しては造詣の深い方なので、その言には一定の説得力があります。

 

他方、このような厳しい法的措置によって負の連鎖が生まれるのではないか、という懸念の声も見受けられます。

「バイトテロ」は訴えても抑止できない、3つの理由 (1/6) - ITmedia ビジネスオンライン

 

これらの見解を踏まえつつ、私の見解を端的に述べれば

「厳しい法的措置をチラつかせただけで全てが解決するわけもないが、同時に、厳しい法的措置をチラつかせただけで負のスパイラルに陥るような職場は、そもそもどうやっても健全化などできない。」

ということに収束します。

 

まともな人材であれば、「やっちゃいけないことはやらない」のであり、「やっちゃいけないこと」が明示された上で、その内容が理不尽でなければ、「やっちゃいけないことをやったら法的措置」と言われたところで忌避感を持つわけがありません。(「やっちゃいけないこと」が明示されなかったり、内容が理不尽であれば忌避感を持ちますが、そんな運用をする職場は「法的措置」云々に関係なく忌避されて当然です。)

 

単体での決定打は無い

ここまで見てきたように、どこかに特効薬が存在するわけではありません。

教育も待遇改善も法的処置もそれぞれに有効でありつつも、どれかだけで充足できるわけではなく全て必要である、というのが私の意見です。

 

とはいえ、やたらとコストかけるわけにもいかないのが企業運営であり、店舗運営でしょう。

なので、無駄を省いて運営できるように、手間を小さくできるよう設計することが大事です。

 

要点を上げれば、

 

  • 就業規則等で、バイトテロについての損害賠償請求を可能にする条項を設ける。(その方法は、以前ご紹介した書籍に詳しいのでご一読を。)
  • スタッフ採用の面接の際に必ず、バイトテロを行ったらクビにするだけでなく損害賠償もあり得る旨の説明をし、バイトテロをしないということに同意できるかを確認する。
  • 採用後の初期研修で、以下をできるだけシンプルに、明確に伝える。
    • 店舗内や就業時間中に写真や動画を撮ってネットにアップしないこと。
    • ネットにアップすれば、ネット民が見つけ出して騒ぐので、すぐにバレること。
    • その結果として炎上に至れば、高額な損害賠償請求が発生すること。
  • 働きやすい職場環境を整え、職場に対するロイヤルティを高められるようマネジメントする。そのためのマネジメント研究は各店舗任せにせず、本部がバックアップする企業体質を作ること。
  • 本部は、ブラック企業を反面教師としたマネジメント研究をすること。
  • 経営陣は、現代的労働観を学ぶこと。

というようなことに集約されます。

 

賠償請求という恐怖感だけで縛るのは限界がありますので、同時に、職場に対するロイヤルティ(=「この職場で働き続けたい」)を高める施策が欠かせません。

その職場環境改善も含め、後半の組織マネジメントについてはハードルの高さを感じる向きもあるでしょう。

しかしながら、かつてのゼンショーがそうであったように、これに着手することで経営全体が良いサイクルで回り始めるものなので、単にバイトテロ対策というミクロな話でなく、健全経営に向けての課題として取り組むのをお勧めします。

 

 

ユーモアと広告と炎上

近年、ユーモアのつもりが消費者の怒りを買って炎上する、というプロモーションが散見されます。

 

つい先日も、ロフトのプロモーションがこのパターンで炎上し、動画の配信を停止しました。

 

ロフトのバレンタイン広告「女の子って楽しい!」にTwitterユーザー困惑 「どういう意味?」「チョコを売る気はあるのか」 - ねとらぼ

ロフトのバレンタイン広告が物議で取り下げに。 「女は陰湿という考えが透けて見える」「なんの意図?」【UPDATE】 | ハフポスト

「女性蔑視」批判のロフト広告にデザイナー言及 「誰も傷つけるつもりはありませんでした」 : J-CASTニュース

 

これについては、ネットメディアでは

「女の友情は表面的だと言いたいのか」

「女は陰湿だというのか」

「女を馬鹿にしている」

などの声を主に拾っており、それを受けて「またフェミが騒いでいる」というような冷淡な感想を述べるネットユーザーもいます。

 

私は、このプロモーションのクリエイティブに関して、全く以って擁護の余地は無いと思っています。

それは、ポリティカルコレクトネスの観点から云々、という以前に、そもそもプロモーションとしての出来が悪すぎるからです。

それも、単につまらないということではなく、これをユーモアだと思っているユーモアのセンスが浅はかであると思うからです。

 

ユーモアというものは、そのユーモアが発せられる前提となるコンテクストを共有していなければ、ただの暴力になる場合があります。特に今回のロフトのプロモーションのように、誰かをせせら笑うようなブラック系のユーモアではそれが顕著です。

プロモーションは、お笑い番組でも、ライブハウスでも、コミックでも小説でも映画でもありません。コンテクストを共有していない人の目に不意に飛び込んでくるものがプロモーションなのです。

つまり、「このプロモーションのユーモアが分からないなんてナンセンスだ」などという擁護をする方がナンセンスであり、自身のコンテクストを他者に強要する以外の何物でもないわけです。

プロモーションというのは、ターゲットである顧客から支持されて始めて機能するわけで、コンテクストの前提も無いままに、何故顧客をせせら笑うようなクリエイティブを作ってしまうのか理解に苦しみます。

 

もしかしたら、『臨死!江古田ちゃん』や『女は笑顔で殴り合う』などのような作品が許容されている文脈を過大視して、それがロフトのターゲットである若い女性顧客層のコンテクストとして一般化されていると、企画側が勘違いした節があるかもしれません。

たしかに、それらの作品は人気もあり、アニメ化やドラマ化がされています。ですが、その作品はターゲット顧客層の8割9割が慣れ親しんだコンテンツだと言えますか、と。

 

たとえば、

Amazonで『臨死!江古田ちゃん』に星4つ以上つけている人」

というような、ピンポイントなターゲティングをするのであれば、あるいは受け入れられる素地があるかもしれません。が、そんなピンポイントなターゲティングを、このようなプロモーションで行うはずもありません。

 

また、そもそも、エンタメ作品の登場人物がイヤなヤツとして描かれていても不愉快になりませんが、一企業のプロモーションにおいて表現される匿名性の高い女子一般像として雑なくくりでdisられれば、女性一般(自身も含めた女性一般)に対する攻撃であると受け止められて当然です。

このように、エンタメと広告では、受け手への伝わり方のコンテクストの違いもあるわけです。

 

さらに見方を変えて、こようなプロモーションがローンチされてしまうことの異常性を、ターゲット層の異なる商材に置き換えて考えてみましょう。

 

たとえば、高級車のプロモーションで、金満ジジイの下品な成金趣味を揶揄するようなクリエイティブを作るかというと、そんなわけがありません。

スポーツ用品メーカーのプロモーションで、「運動部の部活に燃えてる奴って暑苦しいよね」みたいな冷笑系のクリエイティブを作るかというと、それもありえないでしょう。

自社の顧客をせせら笑うような「ユーモア」をプロモーションに盛り込んだりはしないのです。

 

プロモーションにおいて、誰かを馬鹿にするようなクリエイティブを作るならば、それはそれ相応の反撃や応酬を覚悟して、腹をくくってローンチしなければならないということを、企業の宣伝担当者は重々理解しておく必要があるでしょう。

 

 

参考記事:

Loftの広告、炎上から取り下げまでで思ったこと

Loftのバレンタイン広告が読解力を求められすぎる件について - エモの名は。

 

【ソーシャルリスクマネジメント体制を作れ!】その3 「ネット炎上に備える体制」で一番大切なこと

前回の【ソーシャルリスクマネジメント体制を作れ!】では、消費者の不満や憤りに対しては、その場しのぎの誤魔化しではなく、真摯に向き合うことが大切だと述べました。

 

では、「真摯に向き合う」とはどういうことでしょうか。

 

例えば、お客様センターに寄せられたクレームに対して誠心誠意謝罪する、というのも「真摯に向き合う」ということに含まれるかもしれません。

ですが、ここで想定しているのは、そのような個別の顧客に対して丁寧に応対するというミクロな話ではありません。いくらクレーム応対が丁寧でも、そのクレームの発生している原因に対して何ら手を打たないようであれば、それは「真摯に向き合う」とは言わない(むしろ、「その場しのぎ」だと言える)のです。

 

つまり、ここで言う「真摯に向き合う」とは、不満や憤りの真の原因を特定して、改善に繋げることを指します。

 

おそらく、ちゃんとした企業であれば、消費者やサプライチェーンから寄せられる不具合やトラブルや不満などの声を、お客様センターや営業部門が集約して、事業側(商品やサービスの企画部門や製造部門など)にフィードバックし、改善を図る体制が構築されていることと思います。その際、お客様センターや営業部門に寄せられた声に対して、全部鵜呑みにしてプライオリティも付けずに改善に取り組むというようなことは、どこの企業でもやらないでしょうし、やるべきでもないでしょう。

集められた声を何らかの改善に活かすのであれば、その「声」の客観性や再現性や内容の重篤性などの様々な観点から評価をして、優先度を判断するはずです。その結果によっては、事業側に伝えられずに終わるものもあるでしょうし、経営課題として早急に取り組むべきというアラート付きで共有されるケースもあるでしょう。

このような改善サイクルの中に、「ネットの声」を含めることが、「ネット炎上に備える体制」で一番大切なことです。

 

もちろん、「ネットの声」をただ集めれば良いということではありません。

集めた声をインプットとして、事業の改善に活かして始めて、「真摯に向き合う」こととなり、「ネット炎上に備える体制」の真価を発揮できることになります。

 

ですが、何故わざわざネットの声を集めなければならないのでしょうか。

声ならば、お客様センターや営業担当が十分に拾ってきているのだから、わざわざこちらから積極的に集めにいかなくても良いのではないか、という疑問が湧きます。

 

隠れた「素」の声を拾えるのがソーシャルメディア

具体的な話をしましょう。

 

顧客ロイヤルティを語る上で、古くから用いられる「グッドマンの法則」という法則があります。

グッドマンの法則ー | 顧客ロイヤルティ協会

 

グッドマンの法則の第一の法則で明らかにされているとおり、顧客は、商品やサービスに不満があってもわざわざ連絡してこない方が多数派なのです。つまり、不満を持ったまま、そっと離脱するのです。

ですが、「わざわざ連絡してこない」人たちが、ソーシャルメディアで不満をつぶやくことはあるでしょう。

つまり、待っているだけでは拾えない顧客の声を拾いに行くことで、従来の体制では顕在化しなかった問題や課題を発見できるということでもあります。

 

このような声に耳をしっかり傾けていれば、もしかしたら避けられたかもしれない炎上(というか、経営危機)の事例があります。

それが、日本マクドナルドのケースです。

 

日本マクドナルドのどん底とV字回復

日本マクドナルドは、2010年代前半に経営の不調が続き、2015年の1月に異物混入問題で大炎上してさらに大きく業績を落としました。

過失も知らんぷり…会見で分かったマクドナルドの企業姿勢|日刊ゲンダイDIGITAL 

 

これは、1回の異物混入で業績に影響を与えるほどの問題になったわけではなく、それまでも度々発生していた同様の問題に十分対処しないまま繰り返し異物混入を繰り返していた結果として、臨界点を超えるような形で湧き上がった大炎上でした。

【炎上】日本マクドナルドが異物混入だらけ!チキンナゲットからビニールなど - NAVER まとめ

これだけ見ると、まるで異物混入ばかりが問題であったように見えますが、実は異物混入に限らず、マクドナルドに対する消費者の不満は様々な形で表出していました。

レジメニューの消えたマクドナルドでポテト単品を注文してみた - ねとらぼ

マクドナルドに立て直しの秘策はあるか 「うるさい」「高い」「まずい」と不満の声 : J-CASTニュース

中川淳一郎さんがジャッジ、愛される企業・叩かれる企業のネット通信簿 | 広報会議デジタル版

 

このような蓄積の末の大炎上であり、経営の悪化であったわけです。

 

日本マクドナルド社もネットの声を無視していたわけではないと思うのですが、それが十分に改善に繋げられることがないままに顧客の不満が溜まっていき、ついに大噴火するのが2015年の大炎上、そして、どん底な業績という一面が存在していたことは間違いありません。

 

しかしながら、その後マクドナルドは姿勢を改めました。

なぜマックは急速に業績回復できたのか? | プレジデントオンライン

記事の中では、代表取締役副社長兼COO(当時)の下平氏の言葉として、

「サラ・カサノバは昨年(2015年)1年間で47都道府県すべてに足を運び、お客様から直接さまざまな声を聞いています。」

と記載しています。全社を挙げて、顧客の声に耳を傾けるようになったわけです。

その後のV字回復は、ビジネスマンであれば多くの方々が記憶されていることと思います。

マクドナルドの復活で見落とされがちな本質 | 企業経営・会計・制度 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

つまり、「よりお客様にフォーカスしたアクション」に取り組んだ結果としてV字回復を果たしたわけです。

 

もちろん、お客様の声というのは、ネットから得るだけで良いのではありません。問い合わせ窓口であるお客様センターからのインプットも必須ですし、店舗からの吸い上げも必要でしょう。その全てを行うことで始めて、バランスよくインプットすることができるわけです。

 

ネット(だけでなく全てのチャネル)からの声を拾い上げ、その内容を検討し、改善に活かすという全社的な体制を構築・運用することで、顧客の不満の原因を解消し、それがネット上の自社に対する負の蓄積を低減する効果を生んで、ネット炎上の起こりにくい企業体質を作っていくということが大切なのです。

そもそもこれは、「ネット炎上」という特定課題の問題ではなく、事業をいかに健全に運営していくかという広範な問題に対する処方箋でもあります。

 

それでも炎上が起こったら

ネット炎上というのは、どんな企業においても100%防げるものではありません。

ここまでは、炎上の原因になるような事業リスクを潰す、という観点から述べてきましたが、ここからは、「ネット炎上に備える体制」は「ネット炎上が起きてしまった時の対処」にも必要だ、ということをお話しします。

 

ネット炎上が発生した際に最も問題になるのは、「この問題に対して、誰の責任において、どのような対処を、いつするのか」を誰が決めるのか分からない、ということです。

仮にマニュアルがあったとしても、そのマニュアルで想定しているとおりの事象が発生するとも限りませんし、マニュアル自体が古くて使い物にならない可能性もあります。(実際、ネット炎上の傾向はどんどん変化するので、1年前に作ったマニュアルが役に立たないという可能性も生じます。)

 

しかしながら、普段から「ネット炎上に備える体制」を運用し、お客様センターや営業担当からの報告や、ネット上の顧客の声を収集・分析して改善に当たるというサイクルを回していた場合、どのような問題がどの部門の管掌で、他のどの部門との連携で対処に当たるべきなのかの訓練が積まれた状態となっています。

もちろんネット炎上となれば、問題の大きさは普段とは比べものにならないほど大きいでしょう。ですが、普段からの連携があれば、少なくとも管掌部門が不明瞭で対処に困る、などということは発生しません。

言うなれば、普段から小さな問題に対して「真摯に向き合う」ことで、大きな問題が発生した場合の演習を行なっているのと同じ効果が望めるわけです。(しかもその「演習」は、ここまで見てきたとおり、実務としても事業の役に立つわけです。)

 

このように、一石二鳥なのが「ネット炎上に備える体制」なのです。

 

従業員の声も大事なインプット

ここまでは、顧客の声を拾うということにフォーカスして論じてきましたが、次回は、事業側ではなく企業ガバナンスの観点から、従業員の声も大事なインプットであり、労務関連のネット炎上を避ける意味でも注視すべきである、ということをお話ししていきます。

 

「従業員」と「ネット炎上」という言葉を並べると、経営サイドとしては、従業員の素行の悪いネット投稿が元で炎上する、というようなことを連想されるかもしれませんが、「従業員の声」にはもっと大事なことも見出すことができますので、次回ご紹介したいと思います。

 

 

「デマ」リスクに対する備え

ネット炎上では時に、ネットユーザーの勘違いや意図的なデマなどで、無関係な第三者にまで火の手が押し寄せることがあります。

 

たとえば、ある事件の容疑者の勤め先と誤認されてしまった企業が、その容疑者と全く無関係であるにもかかわらず、ネット上で誹謗中傷を受けたり、その誤った情報を真に受けた人からの嫌がらせを受けるなどしたケースがあります。

 

東名高速あおり運転事故でデマ書き込み、11人書類送検 被害社長は民事訴訟検討「転載した人も同罪」

 

このようなデマは一度広がると、それを訂正したり打ち消したりするのが非常に大変です。

このため、デマが広がる前に先手を打つことが重要です。

その「先手を打つ」のお手本のような事例が、20191月に発生しました。

 

通信教育「Z会」がNGT事件との関与否定を発表

 

ソーシャルメディア時代以前であれば、これは過剰な反応であるかもしれません。

しかしながら、ソーシャルメディアでは誰もが不規則に情報を発信でき、しかもそれが一瞬で拡散するリスクも存在するため、デマが発生する前に先手を打ってリスクを低減することには大きな意味があります。

 

 

もちろん、このような事件絡みばかりでなく、自社のサービスや商品に関するデマが流布するという場合もあります。

 

「フラッシュ撮影のせいでマグロが死んだ」誤情報拡散 美ら海水族館は「フラッシュ影響しない」

 

「店員が募金箱のお金をレジに入れている!」ツイート拡散も、ツイ主炎上 ローソン「募金額の確認です」

 

このようなデマは、発生前に予測することは難しい場合も多々ありますが、初期段階で手を打てれば、それ以上拡散するのを防ぐことができます。

特に、悪意をもってデマを拡散するケースではなく、正義感や義憤に駆られてデマを拡散してしまうようなケースには、初期段階で対処することでかなりの効果を上げることが予想できます。

 

なぜかというと、デマが大きく広がる前にオフィシャルな情報が発表されると、デマを発信した人に対して、他のネットユーザーが「それは間違った情報である」と個別にツッコミを入れてくれるからです。ツッコミを受けた側は、正義感や義憤に駆られての発信ですから、その情報がデマであればそれ以上の拡散を止めるわけです。

 

それが、デマが大きく広がった後では、ツッコミを入れる側も手が回らず、逐一個別にツッコミを入れるということが難しくなるので、デマの抑制効果が相対的に小さくなってしまうわけです。

 

 

では、早い段階でこのような対策を取るには、どうすれば良いのでしょうか。

 

まず第一に、デマの兆しを早期に発見することが重要です。存在を認知できなければ、対策のしようがありません。

このためには、日頃から、自社の社名や商品名、サービス名などでエゴサーチをおこなう必要があります。

 

第二に、エゴサーチで拾った情報に対して的確にリスク評価をし、必要に応じた対処を行う体制が必要です。

せっかく情報を拾っても、それに対して的確に対処できなければ意味がありません。

 

 

このような体制については、本ブログで、【ソーシャルリスクマネジメント体制を作れ!】 として記事を随時アップしていきますので、是非ご笑覧ください。

 

 

新卒向けのソーシャルメディア研修、準備はお済みですか?

各企業の人事担当の皆様は、ちょうど今、4月入社の新卒社員向けの研修計画立案の大詰めを迎えていらっしゃるのではないでしょうか。

 

新卒社員に対する入社研修は、学生から社会人へ頭を切り替えるための研修でもありますので、それぞれの企業が工夫を凝らして取り組んでいる重要な研修です。新卒採用をしている企業で、新卒研修を「どうでもいいもの」と考えている企業は、おそらく存在しないことと思います。

 

そのため、新卒研修には各社のカラーが出やすいものですし、「他の会社では知らんが、うちの会社にとってはこれが重要なんだ」というこだわりもあることでしょう。

 

ソーシャルメディアリテラシー研修は必須?

新卒研修のメニューに、ソーシャルメディアを利用する際に気をつけなければならないことを教える「ソーシャルメディアリテラシー研修」を含める企業が多くなってきています。

 

2011年から2013年にかけて、従業員のプライベートなSNSアカウントでの投稿が原因となってネット炎上が発生するケースが後を絶ちませんでした。

このため、各企業では従業員向けにソーシャルメディアリテラシー研修を行う企業が増え始め、一定規模以上の企業においては、そういった研修を全く行ったことが無いという企業が少数派になっていると思います。

 

ソーシャルメディアリテラシー研修での最も重要なポイントは

「プライベートなSNS利用のことまで会社にとやかく言われなければならないのか」

という従業員の拒否感に対して、ちゃんと応えることです。

 

もし、

「オマエら社員なんだから、会社の言うことに逆らうな」

などという指導をしても、全く研修効果は上がりません。おそらく面従腹背を招くだけでしょう。

 

面従腹背であれば、当然、ソーシャルメディア上でのトラブルが発生するリスクは軽減できません。

ひとたび従業員がソーシャルメディアで炎上すれば、「会社はどんな教育してるんだ」と就業先である企業に累が及ぶのは避けられないので、大切なのは研修を行ったというアリバイ作りではなく、ちゃんと理解が定着するように研修することです。

 

ソーシャルメディアリテラシー研修を実施するにあたっての悩み

現在のように、ソーシャルメディアが社会のインフラと化している状況で、企業としてソーシャルメディアリテラシー研修を行わないリスクは、決して軽くはありません。

とはいえ、ひとくちにソーシャルメディアリテラシー研修と言っても、何をどう研修するべきなのか。

すでに研修を実施している企業にとっても、頭の痛いところではないでしょうか。

 

まず、内製で行うのか、外部に依頼するのか。

外部に依頼するとすれば、Eラーニングのようなお手軽なものから、講師を派遣するようなサービスに依頼をするものまで、どのような形態を選択すればいいのか。

外部に依頼するとなると、通り一遍な内容になってしまい、学習効果があまり期待できないのではないか。

自社の実態に即した研修を行いたいけれど、外部の講師ではそこまで汲み取った研修をするのは難しいのではないか。

 

そういう問題点が気がかりな場合、研修を内製化することになるわけですが、それはそれで、限られた人員で研修を設計したり実施したりするのは負担が生じます。

その上、

 

  • 研修効果は上がっているのか。
  • 正しい内容を伝えられているのだろうか。
  • 漏れや偏りは無いか。
  • 内容が古いのではないか。

など、様々な不安が生じる場合も多いでしょう。

 

企業人としてのソーシャルメディアリテラシーには3段階ある

ソーシャルメディアリテラシー研修を行うに際して、そもそもソーシャルメディアリテラシーとは何なのかを整理する必要があります。

それを整理しないと、トピックを並べるだけの研修となってしまい、研修効果が小さくなってしまいます。

 

企業の本音を端的に言えば、

 

  • 会社にとって都合の悪いことは書くな
  • 会社の売上や利益に貢献するならドシドシやれ

という2点に集約されるのではないかと思いますが、その際、経営サイドにとって優先順位が高いのは、売上や利益につながるソーシャルメディアリテラシーではないかと思います。

が、そのような、攻めのソーシャルメディア利用をする場合に、決しておろそかにしてはいけないのが、「何をやってはいけないのか」に関する確固たる理解です。

その理解を怠ったがために、人気を博しつつも最終的に大炎上に至り、積み上げたブランド資産を全部失ってしまった事例が存在します。

 

【どうしてこうなった?】侵略戦争で終了のまんべくん、人気絶頂の炎上期から近況まで思った事をまとめてみた。

 

このような破綻を避けるためには、「攻め」を理解する前提として、どこまで攻めてもいいのかの「守り」を理解しなければなりません。

それを図式化すると以下のような3段構成になります。

 

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「社会人としてNGなこと」は、どの企業においても共通です。企業でなく、社会生活を営む人でれば全ての人にとって共通で必要なことなので、Eラーニングのような定型化された研修でも網羅されている範囲です。

 

その上の「自社の就業規則や事業モデルに照らしてNGなこと」は、各社での違いが生じやすいところですし、この部分は特に入社直後の新卒社員にとっては最もイメージしにくい部分だと思います。このため、企業として所期する本来守らなければいけないことと、従業員が認識している「守らなければいけないこと」との間にギャップが生じやすく、思わぬ事故につながったりします。配属前の新卒社員にソーシャルメディアリテラシー研修を行うならば、この部分にこそ最も力を注ぐべきでしょう。

 

3段目にあるのが、先に述べた「攻め」に当たる「自社の事業にプラスになる利用の仕方」です。

これは、リスクマネジメントではなく、プロモーションやマーケティングの領域になります。

これは、各事業特性を踏まえて考えなければならないものなので、配属後に各事業の課題点と突き合わせて学ぶべきことと思います。

 

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上記の3段階のうちの下2つ、

 

  • 社会人としてNGなこと
  • 自社の就業規則や事業モデルに照らしてNGなこと

について効果的な研修をご用命の場合は、本ブログ運営者(info@s-risk.net)までお問い合わせください。

内容やご予算など、柔軟に対応できます。

 

 

【ソーシャルリスクマネジメント体制を作れ!】その2 「ネット炎上に備える体制」は、「ネット炎上を起こさない体制」であるという話

前回は、「炎上した時だけ慌ててコンサルを呼んできても意味ないよ」というお話をしました。

大事なのは、「炎上に備える体制」を作ることなのだと。

 

ですが、このように言うと

「起こるか起こらないかも分からない、むしろ起こらない可能性の方が高いネット炎上のために、リソースを割いて体制を作るなんて割に合わない」

という感想を持たれる方が非常に多いです。実際に体制を作っていない会社様ほど、このようにお考えになる場合が多いように思います。

 

逆に、すでに体制を整えている会社様は、実は日々の業務の中でこの「体制」を活かして業務をなさっているケースが多いので、「割に合わない」とお考えのケースは少ないように思います。

もちろん、そのような体制を活かしている会社様が、年がら年中炎上しているわけではありません。

では、炎上が起きるわけでもないのに、どうして日々の業務にこの「体制」が活かされるのでしょうか。活かせるシチュエーションなど、あるのでしょうか。

 

その答えは、「ネット炎上に備える体制」は、ネット炎上が起きた時だけに稼働するものではない、ということです。

 

「ネット炎上に備える体制」は、消火器ではありません

「炎上に備える」というと、どうしても「炎上が起きた時に早期に鎮火する」ことを目的としているように感じてしまうため、ビルに備え付けられている消火器のように、「使わないもの」というイメージを想起するかもしれません。

が、実際には、炎上が起きた時にだけ稼働するのではなく、炎上を起こさないように日頃から活用するのが「炎上に備える体制」なのです。

 

というのも、企業を対象としたネット炎上とは、ネット上で公然と可視化されたクレームがソーシャルメディアなどを通じて拡散した状態のことを指すのですから、常日頃からクレームに対して真摯に向き合う体制こそが「ネット炎上に備える体制」なのです。

 

多くの企業で、お客様センターに寄せられたクレームは関係部門にシェアされ、当該顧客の問題解決に当たるとともに、必要であれば根本的な課題解決のための施策に取り組んだりというスキームが用意されていると思います。

そのスキームの始点として、お客様センターへのクレームだけでなく、ソーシャルメディアに書き込まれている不満・苦情も想定することがその第一歩です。平たく言えば、ちゃんとソーシャルメディアに書き込まれた声を拾って、商品やサービスや組織運営の改善に生かしていきましょう、ということです。

 

「なんだ、そんなことか」

とお感じになったかもしれません。

はい、そんなことなのです。

 

ただし、ソーシャルメディアが一般化する以前と現在とでは、クレームに起因するリスクの在り方が全く異なるため、ソーシャルメディアの声を拾って生かしていく際に気をつけなければならない独特の注意点があります。

 

ソーシャルメディア時代のクレーム対応

ソーシャルメディア以前であれば、消費者が企業にクレームを入れても、消費者側は他に同じクレームが存在するのかどうかすら知ることができませんでしたし、逆に企業側からすれば、個々の消費者クレームをその場その場で対応していれば何とかなったわけです。

あくまで発信力を持つのはマスメディアであり、そのマスメディアに醜聞を書き立てられたりしなければ、個々の消費者個人の範囲を超えて社会的な問題にまで発展することはほぼありませんでした。

 

それが、ソーシャルメディアが一般化した現在、その場しのぎのクレーム対応を個別の消費者に対して行うこと自体が、危険を孕む行為となってきました。

ソーシャルメディア上では、商品やサービスに対する不満や憤りを気軽に発信できる上に、自分と同じ不満や憤りを感じている人を簡単に見つけることができます。つまり、消費者の不満や憤りは、消費者個人の問題を超えて、公知の事実になってしまうということです。

そんな時代背景を考えれば、企業側が消費者の不満や憤りに対して取るべき態度は、その場しのぎの誤魔化しではなく、真摯に向き合うことです。

 

先に書いたとおり、ネット炎上とは、「ネット上で公然と可視化されたクレームがソーシャルメディアなどを通じて拡散した状態」なわけですから、拡散する前に真摯に対応すれば、炎上にまで至らずに済むのです。

 

その「真摯に対応」するための体制こそが「ネット炎上を起こさない体制」であり、「ネット炎上に備える体制」そのものなのです。

 

次回は、「真摯に対応」するための「炎上に備える体制」について、より深掘りしていきたいと思います。