ソーシャルメディア時代のリスクマネジメント

ソーシャルメディア関連を専門とするリスクコンサルタントが、企業のリスクマネジメントについて書いています。

ユーモアと広告と炎上

近年、ユーモアのつもりが消費者の怒りを買って炎上する、というプロモーションが散見されます。

 

つい先日も、ロフトのプロモーションがこのパターンで炎上し、動画の配信を停止しました。

 

ロフトのバレンタイン広告「女の子って楽しい!」にTwitterユーザー困惑 「どういう意味?」「チョコを売る気はあるのか」 - ねとらぼ

ロフトのバレンタイン広告が物議で取り下げに。 「女は陰湿という考えが透けて見える」「なんの意図?」【UPDATE】 | ハフポスト

「女性蔑視」批判のロフト広告にデザイナー言及 「誰も傷つけるつもりはありませんでした」 : J-CASTニュース

 

これについては、ネットメディアでは

「女の友情は表面的だと言いたいのか」

「女は陰湿だというのか」

「女を馬鹿にしている」

などの声を主に拾っており、それを受けて「またフェミが騒いでいる」というような冷淡な感想を述べるネットユーザーもいます。

 

私は、このプロモーションのクリエイティブに関して、全く以って擁護の余地は無いと思っています。

それは、ポリティカルコレクトネスの観点から云々、という以前に、そもそもプロモーションとしての出来が悪すぎるからです。

それも、単につまらないということではなく、これをユーモアだと思っているユーモアのセンスが浅はかであると思うからです。

 

ユーモアというものは、そのユーモアが発せられる前提となるコンテクストを共有していなければ、ただの暴力になる場合があります。特に今回のロフトのプロモーションのように、誰かをせせら笑うようなブラック系のユーモアではそれが顕著です。

プロモーションは、お笑い番組でも、ライブハウスでも、コミックでも小説でも映画でもありません。コンテクストを共有していない人の目に不意に飛び込んでくるものがプロモーションなのです。

つまり、「このプロモーションのユーモアが分からないなんてナンセンスだ」などという擁護をする方がナンセンスであり、自身のコンテクストを他者に強要する以外の何物でもないわけです。

プロモーションというのは、ターゲットである顧客から支持されて始めて機能するわけで、コンテクストの前提も無いままに、何故顧客をせせら笑うようなクリエイティブを作ってしまうのか理解に苦しみます。

 

もしかしたら、『臨死!江古田ちゃん』や『女は笑顔で殴り合う』などのような作品が許容されている文脈を過大視して、それがロフトのターゲットである若い女性顧客層のコンテクストとして一般化されていると、企画側が勘違いした節があるかもしれません。

たしかに、それらの作品は人気もあり、アニメ化やドラマ化がされています。ですが、その作品はターゲット顧客層の8割9割が慣れ親しんだコンテンツだと言えますか、と。

 

たとえば、

Amazonで『臨死!江古田ちゃん』に星4つ以上つけている人」

というような、ピンポイントなターゲティングをするのであれば、あるいは受け入れられる素地があるかもしれません。が、そんなピンポイントなターゲティングを、このようなプロモーションで行うはずもありません。

 

また、そもそも、エンタメ作品の登場人物がイヤなヤツとして描かれていても不愉快になりませんが、一企業のプロモーションにおいて表現される匿名性の高い女子一般像として雑なくくりでdisられれば、女性一般(自身も含めた女性一般)に対する攻撃であると受け止められて当然です。

このように、エンタメと広告では、受け手への伝わり方のコンテクストの違いもあるわけです。

 

さらに見方を変えて、こようなプロモーションがローンチされてしまうことの異常性を、ターゲット層の異なる商材に置き換えて考えてみましょう。

 

たとえば、高級車のプロモーションで、金満ジジイの下品な成金趣味を揶揄するようなクリエイティブを作るかというと、そんなわけがありません。

スポーツ用品メーカーのプロモーションで、「運動部の部活に燃えてる奴って暑苦しいよね」みたいな冷笑系のクリエイティブを作るかというと、それもありえないでしょう。

自社の顧客をせせら笑うような「ユーモア」をプロモーションに盛り込んだりはしないのです。

 

プロモーションにおいて、誰かを馬鹿にするようなクリエイティブを作るならば、それはそれ相応の反撃や応酬を覚悟して、腹をくくってローンチしなければならないということを、企業の宣伝担当者は重々理解しておく必要があるでしょう。

 

 

参考記事:

Loftの広告、炎上から取り下げまでで思ったこと

Loftのバレンタイン広告が読解力を求められすぎる件について - エモの名は。

 

【ソーシャルリスクマネジメント体制を作れ!】その3 「ネット炎上に備える体制」で一番大切なこと

前回の【ソーシャルリスクマネジメント体制を作れ!】では、消費者の不満や憤りに対しては、その場しのぎの誤魔化しではなく、真摯に向き合うことが大切だと述べました。

 

では、「真摯に向き合う」とはどういうことでしょうか。

 

例えば、お客様センターに寄せられたクレームに対して誠心誠意謝罪する、というのも「真摯に向き合う」ということに含まれるかもしれません。

ですが、ここで想定しているのは、そのような個別の顧客に対して丁寧に応対するというミクロな話ではありません。いくらクレーム応対が丁寧でも、そのクレームの発生している原因に対して何ら手を打たないようであれば、それは「真摯に向き合う」とは言わない(むしろ、「その場しのぎ」だと言える)のです。

 

つまり、ここで言う「真摯に向き合う」とは、不満や憤りの真の原因を特定して、改善に繋げることを指します。

 

おそらく、ちゃんとした企業であれば、消費者やサプライチェーンから寄せられる不具合やトラブルや不満などの声を、お客様センターや営業部門が集約して、事業側(商品やサービスの企画部門や製造部門など)にフィードバックし、改善を図る体制が構築されていることと思います。その際、お客様センターや営業部門に寄せられた声に対して、全部鵜呑みにしてプライオリティも付けずに改善に取り組むというようなことは、どこの企業でもやらないでしょうし、やるべきでもないでしょう。

集められた声を何らかの改善に活かすのであれば、その「声」の客観性や再現性や内容の重篤性などの様々な観点から評価をして、優先度を判断するはずです。その結果によっては、事業側に伝えられずに終わるものもあるでしょうし、経営課題として早急に取り組むべきというアラート付きで共有されるケースもあるでしょう。

このような改善サイクルの中に、「ネットの声」を含めることが、「ネット炎上に備える体制」で一番大切なことです。

 

もちろん、「ネットの声」をただ集めれば良いということではありません。

集めた声をインプットとして、事業の改善に活かして始めて、「真摯に向き合う」こととなり、「ネット炎上に備える体制」の真価を発揮できることになります。

 

ですが、何故わざわざネットの声を集めなければならないのでしょうか。

声ならば、お客様センターや営業担当が十分に拾ってきているのだから、わざわざこちらから積極的に集めにいかなくても良いのではないか、という疑問が湧きます。

 

隠れた「素」の声を拾えるのがソーシャルメディア

具体的な話をしましょう。

 

顧客ロイヤルティを語る上で、古くから用いられる「グッドマンの法則」という法則があります。

グッドマンの法則ー | 顧客ロイヤルティ協会

 

グッドマンの法則の第一の法則で明らかにされているとおり、顧客は、商品やサービスに不満があってもわざわざ連絡してこない方が多数派なのです。つまり、不満を持ったまま、そっと離脱するのです。

ですが、「わざわざ連絡してこない」人たちが、ソーシャルメディアで不満をつぶやくことはあるでしょう。

つまり、待っているだけでは拾えない顧客の声を拾いに行くことで、従来の体制では顕在化しなかった問題や課題を発見できるということでもあります。

 

このような声に耳をしっかり傾けていれば、もしかしたら避けられたかもしれない炎上(というか、経営危機)の事例があります。

それが、日本マクドナルドのケースです。

 

日本マクドナルドのどん底とV字回復

日本マクドナルドは、2010年代前半に経営の不調が続き、2015年の1月に異物混入問題で大炎上してさらに大きく業績を落としました。

過失も知らんぷり…会見で分かったマクドナルドの企業姿勢|日刊ゲンダイDIGITAL 

 

これは、1回の異物混入で業績に影響を与えるほどの問題になったわけではなく、それまでも度々発生していた同様の問題に十分対処しないまま繰り返し異物混入を繰り返していた結果として、臨界点を超えるような形で湧き上がった大炎上でした。

【炎上】日本マクドナルドが異物混入だらけ!チキンナゲットからビニールなど - NAVER まとめ

これだけ見ると、まるで異物混入ばかりが問題であったように見えますが、実は異物混入に限らず、マクドナルドに対する消費者の不満は様々な形で表出していました。

レジメニューの消えたマクドナルドでポテト単品を注文してみた - ねとらぼ

マクドナルドに立て直しの秘策はあるか 「うるさい」「高い」「まずい」と不満の声 : J-CASTニュース

中川淳一郎さんがジャッジ、愛される企業・叩かれる企業のネット通信簿 | 広報会議デジタル版

 

このような蓄積の末の大炎上であり、経営の悪化であったわけです。

 

日本マクドナルド社もネットの声を無視していたわけではないと思うのですが、それが十分に改善に繋げられることがないままに顧客の不満が溜まっていき、ついに大噴火するのが2015年の大炎上、そして、どん底な業績という一面が存在していたことは間違いありません。

 

しかしながら、その後マクドナルドは姿勢を改めました。

なぜマックは急速に業績回復できたのか? | プレジデントオンライン

記事の中では、代表取締役副社長兼COO(当時)の下平氏の言葉として、

「サラ・カサノバは昨年(2015年)1年間で47都道府県すべてに足を運び、お客様から直接さまざまな声を聞いています。」

と記載しています。全社を挙げて、顧客の声に耳を傾けるようになったわけです。

その後のV字回復は、ビジネスマンであれば多くの方々が記憶されていることと思います。

マクドナルドの復活で見落とされがちな本質 | 企業経営・会計・制度 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

つまり、「よりお客様にフォーカスしたアクション」に取り組んだ結果としてV字回復を果たしたわけです。

 

もちろん、お客様の声というのは、ネットから得るだけで良いのではありません。問い合わせ窓口であるお客様センターからのインプットも必須ですし、店舗からの吸い上げも必要でしょう。その全てを行うことで始めて、バランスよくインプットすることができるわけです。

 

ネット(だけでなく全てのチャネル)からの声を拾い上げ、その内容を検討し、改善に活かすという全社的な体制を構築・運用することで、顧客の不満の原因を解消し、それがネット上の自社に対する負の蓄積を低減する効果を生んで、ネット炎上の起こりにくい企業体質を作っていくということが大切なのです。

そもそもこれは、「ネット炎上」という特定課題の問題ではなく、事業をいかに健全に運営していくかという広範な問題に対する処方箋でもあります。

 

それでも炎上が起こったら

ネット炎上というのは、どんな企業においても100%防げるものではありません。

ここまでは、炎上の原因になるような事業リスクを潰す、という観点から述べてきましたが、ここからは、「ネット炎上に備える体制」は「ネット炎上が起きてしまった時の対処」にも必要だ、ということをお話しします。

 

ネット炎上が発生した際に最も問題になるのは、「この問題に対して、誰の責任において、どのような対処を、いつするのか」を誰が決めるのか分からない、ということです。

仮にマニュアルがあったとしても、そのマニュアルで想定しているとおりの事象が発生するとも限りませんし、マニュアル自体が古くて使い物にならない可能性もあります。(実際、ネット炎上の傾向はどんどん変化するので、1年前に作ったマニュアルが役に立たないという可能性も生じます。)

 

しかしながら、普段から「ネット炎上に備える体制」を運用し、お客様センターや営業担当からの報告や、ネット上の顧客の声を収集・分析して改善に当たるというサイクルを回していた場合、どのような問題がどの部門の管掌で、他のどの部門との連携で対処に当たるべきなのかの訓練が積まれた状態となっています。

もちろんネット炎上となれば、問題の大きさは普段とは比べものにならないほど大きいでしょう。ですが、普段からの連携があれば、少なくとも管掌部門が不明瞭で対処に困る、などということは発生しません。

言うなれば、普段から小さな問題に対して「真摯に向き合う」ことで、大きな問題が発生した場合の演習を行なっているのと同じ効果が望めるわけです。(しかもその「演習」は、ここまで見てきたとおり、実務としても事業の役に立つわけです。)

 

このように、一石二鳥なのが「ネット炎上に備える体制」なのです。

 

従業員の声も大事なインプット

ここまでは、顧客の声を拾うということにフォーカスして論じてきましたが、次回は、事業側ではなく企業ガバナンスの観点から、従業員の声も大事なインプットであり、労務関連のネット炎上を避ける意味でも注視すべきである、ということをお話ししていきます。

 

「従業員」と「ネット炎上」という言葉を並べると、経営サイドとしては、従業員の素行の悪いネット投稿が元で炎上する、というようなことを連想されるかもしれませんが、「従業員の声」にはもっと大事なことも見出すことができますので、次回ご紹介したいと思います。

 

 

「デマ」リスクに対する備え

ネット炎上では時に、ネットユーザーの勘違いや意図的なデマなどで、無関係な第三者にまで火の手が押し寄せることがあります。

 

たとえば、ある事件の容疑者の勤め先と誤認されてしまった企業が、その容疑者と全く無関係であるにもかかわらず、ネット上で誹謗中傷を受けたり、その誤った情報を真に受けた人からの嫌がらせを受けるなどしたケースがあります。

 

東名高速あおり運転事故でデマ書き込み、11人書類送検 被害社長は民事訴訟検討「転載した人も同罪」

 

このようなデマは一度広がると、それを訂正したり打ち消したりするのが非常に大変です。

このため、デマが広がる前に先手を打つことが重要です。

その「先手を打つ」のお手本のような事例が、20191月に発生しました。

 

通信教育「Z会」がNGT事件との関与否定を発表

 

ソーシャルメディア時代以前であれば、これは過剰な反応であるかもしれません。

しかしながら、ソーシャルメディアでは誰もが不規則に情報を発信でき、しかもそれが一瞬で拡散するリスクも存在するため、デマが発生する前に先手を打ってリスクを低減することには大きな意味があります。

 

 

もちろん、このような事件絡みばかりでなく、自社のサービスや商品に関するデマが流布するという場合もあります。

 

「フラッシュ撮影のせいでマグロが死んだ」誤情報拡散 美ら海水族館は「フラッシュ影響しない」

 

「店員が募金箱のお金をレジに入れている!」ツイート拡散も、ツイ主炎上 ローソン「募金額の確認です」

 

このようなデマは、発生前に予測することは難しい場合も多々ありますが、初期段階で手を打てれば、それ以上拡散するのを防ぐことができます。

特に、悪意をもってデマを拡散するケースではなく、正義感や義憤に駆られてデマを拡散してしまうようなケースには、初期段階で対処することでかなりの効果を上げることが予想できます。

 

なぜかというと、デマが大きく広がる前にオフィシャルな情報が発表されると、デマを発信した人に対して、他のネットユーザーが「それは間違った情報である」と個別にツッコミを入れてくれるからです。ツッコミを受けた側は、正義感や義憤に駆られての発信ですから、その情報がデマであればそれ以上の拡散を止めるわけです。

 

それが、デマが大きく広がった後では、ツッコミを入れる側も手が回らず、逐一個別にツッコミを入れるということが難しくなるので、デマの抑制効果が相対的に小さくなってしまうわけです。

 

 

では、早い段階でこのような対策を取るには、どうすれば良いのでしょうか。

 

まず第一に、デマの兆しを早期に発見することが重要です。存在を認知できなければ、対策のしようがありません。

このためには、日頃から、自社の社名や商品名、サービス名などでエゴサーチをおこなう必要があります。

 

第二に、エゴサーチで拾った情報に対して的確にリスク評価をし、必要に応じた対処を行う体制が必要です。

せっかく情報を拾っても、それに対して的確に対処できなければ意味がありません。

 

 

このような体制については、本ブログで、【ソーシャルリスクマネジメント体制を作れ!】 として記事を随時アップしていきますので、是非ご笑覧ください。

 

 

新卒向けのソーシャルメディア研修、準備はお済みですか?

各企業の人事担当の皆様は、ちょうど今、4月入社の新卒社員向けの研修計画立案の大詰めを迎えていらっしゃるのではないでしょうか。

 

新卒社員に対する入社研修は、学生から社会人へ頭を切り替えるための研修でもありますので、それぞれの企業が工夫を凝らして取り組んでいる重要な研修です。新卒採用をしている企業で、新卒研修を「どうでもいいもの」と考えている企業は、おそらく存在しないことと思います。

 

そのため、新卒研修には各社のカラーが出やすいものですし、「他の会社では知らんが、うちの会社にとってはこれが重要なんだ」というこだわりもあることでしょう。

 

ソーシャルメディアリテラシー研修は必須?

新卒研修のメニューに、ソーシャルメディアを利用する際に気をつけなければならないことを教える「ソーシャルメディアリテラシー研修」を含める企業が多くなってきています。

 

2011年から2013年にかけて、従業員のプライベートなSNSアカウントでの投稿が原因となってネット炎上が発生するケースが後を絶ちませんでした。

このため、各企業では従業員向けにソーシャルメディアリテラシー研修を行う企業が増え始め、一定規模以上の企業においては、そういった研修を全く行ったことが無いという企業が少数派になっていると思います。

 

ソーシャルメディアリテラシー研修での最も重要なポイントは

「プライベートなSNS利用のことまで会社にとやかく言われなければならないのか」

という従業員の拒否感に対して、ちゃんと応えることです。

 

もし、

「オマエら社員なんだから、会社の言うことに逆らうな」

などという指導をしても、全く研修効果は上がりません。おそらく面従腹背を招くだけでしょう。

 

面従腹背であれば、当然、ソーシャルメディア上でのトラブルが発生するリスクは軽減できません。

ひとたび従業員がソーシャルメディアで炎上すれば、「会社はどんな教育してるんだ」と就業先である企業に累が及ぶのは避けられないので、大切なのは研修を行ったというアリバイ作りではなく、ちゃんと理解が定着するように研修することです。

 

ソーシャルメディアリテラシー研修を実施するにあたっての悩み

現在のように、ソーシャルメディアが社会のインフラと化している状況で、企業としてソーシャルメディアリテラシー研修を行わないリスクは、決して軽くはありません。

とはいえ、ひとくちにソーシャルメディアリテラシー研修と言っても、何をどう研修するべきなのか。

すでに研修を実施している企業にとっても、頭の痛いところではないでしょうか。

 

まず、内製で行うのか、外部に依頼するのか。

外部に依頼するとすれば、Eラーニングのようなお手軽なものから、講師を派遣するようなサービスに依頼をするものまで、どのような形態を選択すればいいのか。

外部に依頼するとなると、通り一遍な内容になってしまい、学習効果があまり期待できないのではないか。

自社の実態に即した研修を行いたいけれど、外部の講師ではそこまで汲み取った研修をするのは難しいのではないか。

 

そういう問題点が気がかりな場合、研修を内製化することになるわけですが、それはそれで、限られた人員で研修を設計したり実施したりするのは負担が生じます。

その上、

 

  • 研修効果は上がっているのか。
  • 正しい内容を伝えられているのだろうか。
  • 漏れや偏りは無いか。
  • 内容が古いのではないか。

など、様々な不安が生じる場合も多いでしょう。

 

企業人としてのソーシャルメディアリテラシーには3段階ある

ソーシャルメディアリテラシー研修を行うに際して、そもそもソーシャルメディアリテラシーとは何なのかを整理する必要があります。

それを整理しないと、トピックを並べるだけの研修となってしまい、研修効果が小さくなってしまいます。

 

企業の本音を端的に言えば、

 

  • 会社にとって都合の悪いことは書くな
  • 会社の売上や利益に貢献するならドシドシやれ

という2点に集約されるのではないかと思いますが、その際、経営サイドにとって優先順位が高いのは、売上や利益につながるソーシャルメディアリテラシーではないかと思います。

が、そのような、攻めのソーシャルメディア利用をする場合に、決しておろそかにしてはいけないのが、「何をやってはいけないのか」に関する確固たる理解です。

その理解を怠ったがために、人気を博しつつも最終的に大炎上に至り、積み上げたブランド資産を全部失ってしまった事例が存在します。

 

【どうしてこうなった?】侵略戦争で終了のまんべくん、人気絶頂の炎上期から近況まで思った事をまとめてみた。

 

このような破綻を避けるためには、「攻め」を理解する前提として、どこまで攻めてもいいのかの「守り」を理解しなければなりません。

それを図式化すると以下のような3段構成になります。

 

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「社会人としてNGなこと」は、どの企業においても共通です。企業でなく、社会生活を営む人でれば全ての人にとって共通で必要なことなので、Eラーニングのような定型化された研修でも網羅されている範囲です。

 

その上の「自社の就業規則や事業モデルに照らしてNGなこと」は、各社での違いが生じやすいところですし、この部分は特に入社直後の新卒社員にとっては最もイメージしにくい部分だと思います。このため、企業として所期する本来守らなければいけないことと、従業員が認識している「守らなければいけないこと」との間にギャップが生じやすく、思わぬ事故につながったりします。配属前の新卒社員にソーシャルメディアリテラシー研修を行うならば、この部分にこそ最も力を注ぐべきでしょう。

 

3段目にあるのが、先に述べた「攻め」に当たる「自社の事業にプラスになる利用の仕方」です。

これは、リスクマネジメントではなく、プロモーションやマーケティングの領域になります。

これは、各事業特性を踏まえて考えなければならないものなので、配属後に各事業の課題点と突き合わせて学ぶべきことと思います。

 

宣伝

上記の3段階のうちの下2つ、

 

  • 社会人としてNGなこと
  • 自社の就業規則や事業モデルに照らしてNGなこと

について効果的な研修をご用命の場合は、本ブログ運営者(info@s-risk.net)までお問い合わせください。

内容やご予算など、柔軟に対応できます。

 

 

【ソーシャルリスクマネジメント体制を作れ!】その2 「ネット炎上に備える体制」は、「ネット炎上を起こさない体制」であるという話

前回は、「炎上した時だけ慌ててコンサルを呼んできても意味ないよ」というお話をしました。

大事なのは、「炎上に備える体制」を作ることなのだと。

 

ですが、このように言うと

「起こるか起こらないかも分からない、むしろ起こらない可能性の方が高いネット炎上のために、リソースを割いて体制を作るなんて割に合わない」

という感想を持たれる方が非常に多いです。実際に体制を作っていない会社様ほど、このようにお考えになる場合が多いように思います。

 

逆に、すでに体制を整えている会社様は、実は日々の業務の中でこの「体制」を活かして業務をなさっているケースが多いので、「割に合わない」とお考えのケースは少ないように思います。

もちろん、そのような体制を活かしている会社様が、年がら年中炎上しているわけではありません。

では、炎上が起きるわけでもないのに、どうして日々の業務にこの「体制」が活かされるのでしょうか。活かせるシチュエーションなど、あるのでしょうか。

 

その答えは、「ネット炎上に備える体制」は、ネット炎上が起きた時だけに稼働するものではない、ということです。

 

「ネット炎上に備える体制」は、消火器ではありません

「炎上に備える」というと、どうしても「炎上が起きた時に早期に鎮火する」ことを目的としているように感じてしまうため、ビルに備え付けられている消火器のように、「使わないもの」というイメージを想起するかもしれません。

が、実際には、炎上が起きた時にだけ稼働するのではなく、炎上を起こさないように日頃から活用するのが「炎上に備える体制」なのです。

 

というのも、企業を対象としたネット炎上とは、ネット上で公然と可視化されたクレームがソーシャルメディアなどを通じて拡散した状態のことを指すのですから、常日頃からクレームに対して真摯に向き合う体制こそが「ネット炎上に備える体制」なのです。

 

多くの企業で、お客様センターに寄せられたクレームは関係部門にシェアされ、当該顧客の問題解決に当たるとともに、必要であれば根本的な課題解決のための施策に取り組んだりというスキームが用意されていると思います。

そのスキームの始点として、お客様センターへのクレームだけでなく、ソーシャルメディアに書き込まれている不満・苦情も想定することがその第一歩です。平たく言えば、ちゃんとソーシャルメディアに書き込まれた声を拾って、商品やサービスや組織運営の改善に生かしていきましょう、ということです。

 

「なんだ、そんなことか」

とお感じになったかもしれません。

はい、そんなことなのです。

 

ただし、ソーシャルメディアが一般化する以前と現在とでは、クレームに起因するリスクの在り方が全く異なるため、ソーシャルメディアの声を拾って生かしていく際に気をつけなければならない独特の注意点があります。

 

ソーシャルメディア時代のクレーム対応

ソーシャルメディア以前であれば、消費者が企業にクレームを入れても、消費者側は他に同じクレームが存在するのかどうかすら知ることができませんでしたし、逆に企業側からすれば、個々の消費者クレームをその場その場で対応していれば何とかなったわけです。

あくまで発信力を持つのはマスメディアであり、そのマスメディアに醜聞を書き立てられたりしなければ、個々の消費者個人の範囲を超えて社会的な問題にまで発展することはほぼありませんでした。

 

それが、ソーシャルメディアが一般化した現在、その場しのぎのクレーム対応を個別の消費者に対して行うこと自体が、危険を孕む行為となってきました。

ソーシャルメディア上では、商品やサービスに対する不満や憤りを気軽に発信できる上に、自分と同じ不満や憤りを感じている人を簡単に見つけることができます。つまり、消費者の不満や憤りは、消費者個人の問題を超えて、公知の事実になってしまうということです。

そんな時代背景を考えれば、企業側が消費者の不満や憤りに対して取るべき態度は、その場しのぎの誤魔化しではなく、真摯に向き合うことです。

 

先に書いたとおり、ネット炎上とは、「ネット上で公然と可視化されたクレームがソーシャルメディアなどを通じて拡散した状態」なわけですから、拡散する前に真摯に対応すれば、炎上にまで至らずに済むのです。

 

その「真摯に対応」するための体制こそが「ネット炎上を起こさない体制」であり、「ネット炎上に備える体制」そのものなのです。

 

次回は、「真摯に対応」するための「炎上に備える体制」について、より深掘りしていきたいと思います。

 

 

【ソーシャルリスクマネジメント体制を作れ!】その1 なぜネット炎上に備えなければならないのか

様々な企業様から、「ネットで自社が炎上したときに、直ぐにプロに相談できる状態を作りたい」というご相談をいただくことがあります。

つまり、万が一炎上した場合に、鎮火させるのを手伝って欲しいというご依頼です。

 

残念ながら、私はそのようなご依頼は、基本的にお断りしています。

 

何故か。

 

ネット炎上した時、すなわち、緊急事態の最中に外部のコンサルタントがいきなり飛び入りで参加しても、力になれることは非常に限られているからです。

それは、どんなコンサルタントでも、どんな会社でも、同じです。

 

コンサルタントを使いこなすにも社内体制は必要

実際にネット炎上が発生したときのことを想定してみましょう。

 

社内の誰かが、ネット上で自社関連のネガティブな話題が拡散されていることに気付いたとします。

(たまたま気付いたのかもしれませんし、普段から業務として自社のエゴサーチをしている場合もあるでしょう。)

そのネガティブな話題について、社内の誰に報告すれば良いかのフローが定まっていて、かつ、周知がなされていなければ、発見者は誰に伝えればいいのか分かりません。仮に、上司に相談したとしても、相談された上司も処置に困ってしまいます。

 

幸い、誰に報告をするのかのフローは決まっていて、発見者がフローに則って報告したとします。

では、その報告された事象に対して、誰がどのような権限において、何を判断すべきなのでしょう?

それが決まっていなければ、報告を受けた担当者は、思い当たる部門の部門長や担当役員などに当たりをつけて相談して回ることになるでしょう。ですが、相談された部門長や担当役員にとっても、果たして自身の判断で対応方針を決めて良いのか、そもそもその判断をするにはどのような事柄を考慮に入れればいいのか、判然としません。

 

例えばここで、ネット炎上に詳しいというコンサルタントに相談したとしても、そのコンサルタントが提案する内容に妥当性があるのか、どうやって決裁者は判断すれば良いのでしょうか? 

そもそもそのコンサルタントは、あなたと同等かそれ以上に、あなたの会社や業界に詳しいのですか?

コンサルタントは実効性のある正しい意見を常に与えてくれるのでしょうか? 

もしコンサルタントの意見が正しくなかったことが後に判明したとして、誰が責任を取るのでしょうか?

 

そのコンサルタントは、ネット炎上には詳しいかもしれませんが、あなたの会社や業界についての十分な見識を持っている可能性は低いです。部外者ですから。

つまり、ネット炎上に詳しいコンサルタントから意見を聴取するだけでなく、そのコンサルタントの言っていることが妥当なのか否かを判断できる体制が社内に無ければ、コンサルタントを使いこなせない可能性が高いのです。

 

逆に、コンサルタントの言っていることの妥当性を判断できるような体制が社内にあるなら、緊急時にわざわざコンサルタントを呼んでくる必要はありません。コンサルタントの意見を聞くまでもなく、自社内で対処法の判断ができるでしょうから。

 

このようなことから、「緊急時だけコンサルをアテにする」というのがどれほど危険なことかご理解いただけると思います。

 

ネット炎上への対処は迅速性が大切

もう一つの問題として、ネット炎上が発生した場合、従来の危機管理広報などとは比べものにならないぐらいに短い時間軸で物事が展開するということが挙げられます。

 

ある銀行が2015年に炎上したことがあります。

経緯としては、その銀行の某支店の窓口業務を担当していた女性が、店頭で手続きに現れた芸能人の身分証明書のコピーを不正に店外に持ち出していたらしく、それがその女性の娘のTwitterでの発言から発覚して炎上に至りました。

本件の時間の流れとしては、発端となったツイートは午後5時ごろに投稿され、それを見たTwitterユーザーが騒ぎ始めたのが同日の午後6時頃、その件に関して当該銀行が公式に謝罪コメントを発表したのが午後10時頃でした。つまり、発端となったツイートから公式謝罪コメントまでたったの5時間(騒ぎになってからであれば4時間)です。

 

このような時間軸で展開することを踏まえれば、そもそも社内で誰がどう判断するのかの備えがなければ、コンサルタントが居ようが居まいが確実に対処が後手に回ることになります。

 

 

このように、

  • 対処の妥当性
  • 対処の迅速性

の2点から、「炎上した時には、まずネット炎上に詳しいコンサルタントに聞く」という社内体制の脆弱性、危険性がご理解いただけると思います。

 

平時から体制を準備しておかなければならない理由は、まさにここにあるのです。

 

今回は「ネット炎上が起きてしまった」という状況にのみ絞ってお話しましたが、そもそもネット炎上を起こさないようにするためにも、平時からの体制づくりが重要です。

 

次回は、体制づくりが「ネット炎上を起こさない」ことに資する、というお話をしたいと思います。

 

【書籍紹介】髙井・岡芦法律事務所編『SNSをめぐるトラブルと労務管理』

もし従業員がソーシャルメディア上で問題を起こしたら

企業が対象となるネット炎上には、いくつかの類型があります。

その一つが、ソーシャルメディアにおいて従業員が私的なアカウントでおこなった投稿が発端となるケースです。

 

例えば、

  • 小売店舗や飲食店などでアルバイト店員が悪ふざけの様子を写した写真自らアップロードする。
  • 来店客に関する秘匿すべき情報や悪口を公然と掲載する。

などのような、業務に間接的に関連するようなものから、某地方新聞の報道部長がTwitterにおいて匿名で暴力的な発言や強迫行為をおこなっていたケースのように、業務とは全く関係のない完全なプライベートでの問題まで、問題投稿と業務との関係性の濃淡は様々です。

 

このような問題が発生した場合に、会社としてどのように対処するかを管掌するのは人事・労務部門です。

 

ソーシャルメディア以前であれば、よほどの大きな企業でなければ、一従業員の不祥事などは社内で内々に済ませて、その件に利害の薄い社外の第三者に対してなんらかの説明をしなければならないような事態は想定できませんでした。

もし社外に対して何らかの説明をするにしても、その相手はせいぜいマスコミ相手であったろうと思います。

それが、ソーシャルメディアが一般化した昨今では、ソーシャルメディア上が主戦場となる形で、従業員が不祥事を起こすこともたびたび発生し、そのような場合にはソーシャルメディアを利用しているであろう一般の人々向けに、当該従業員に対する処断を会社から発表しなければならない状況も発生します。場合によっては、当該従業員に対して何らかの懲戒処分も必要になるかもしれません。

 

が、日本の労働法においては、就業規則に定めていない懲戒処分は無効になってしまう可能性が高く、必要なことは明示的に就業規則などの規定類にあらかじめ定めておかなければなりません。

ここで問題になるのが、果たして現行の就業規則等がソーシャルメディア時代に対応しているのか、ということです。

 

たとえば、従業員がプライベートで利用しているソーシャルメディアにおいて有名人にイチャモンをつけたことがきっかけで、その有名人のファンから多数の批判を浴び、それだけでなく、ソーシャルメディアでの他の投稿内容から氏名や勤務先まで特定され、会社にまで「おまえのところは従業員にどういう教育をしているんだ?!」という抗議の電話が多数かかってきてしまう状況になったとします。

この状況において、貴社の就業規則等では何らかの処分を行う(もしくは、行わない)という判断の根拠になるような規定は存在しますか?

 

規定類や運用体制をソーシャルメディア時代にあわせてアップデート

ソーシャルメディア時代においては、そこで発生する特有のトラブルを想定した規定類の整備や運用体制構築が必要です。

 

今回ご紹介する『SNSをめぐるトラブルと労務管理』は、前述したような従業員が起こしたソーシャルメディアでの問題に関連し、どのようなケースが想定できるのかを過去事例を元に丁寧に解説し、それに対して会社側はどのように予防措置を講じることができるのか、発生したらどのように対処すべきなのかを、労務関連の法律に照らしながら整理してくれています。

 

企業によっては、自社の従業員がソーシャルメディアでトラブルを起こさないか心配で、

「従業員のアカウントを会社側で把握したい」

「従業員がネットに変なことを書かないか、監視したい」

などといった要望を持つこともあるでしょう。

では、それを合法的に行うにはどうしたら良いのか、そもそも合法的にできるものなのか、などといったところから、何かあった時に備えての規定類の準備や意思決定フローの作り方などに至るまで、至れり尽せりの内容になっています。

 

企業の人事・労務担当の方が一から事例をコツコツ集めて対策を考えるのは非常にシンドイはずですので、まだ対策に着手できていない企業ではこの一冊から始めてみるのが良いのではないかと思います。