ソーシャルメディア時代のリスクマネジメント

ソーシャルメディア関連を専門とするリスクコンサルタントが、企業のリスクマネジメントについて書いています。

ネット炎上は、特殊な人たちによる「いいがかり」なのか

ネット炎上に参加するのはごく一部の人たち? 

ネット炎上の参加者はネット利用者の中でも極々一部の人たちである、ということは、ネット炎上を研究している山口真一先生によって一貫して指摘されていることです。

ただ、その「一部の人」がどのような人々であるのかについては、多くの人がイメージしているような「社会不適合者」「引きこもり」「ネット中毒」などのような人物像とは異なっているようです。

 

ネット炎上の研究 「炎上の分類・事例と炎上参加者属性」

http://www.glocom.ac.jp/wp-content/uploads/2016/04/20160510_Yamaguchi.pdf

(リンク先、スライド38ページ目参照) 

 

もちろん、「ネット炎上」に至った事案の中でも、「そりゃ非難を浴びて当然だよね」というものから、「そんなことまで非難されなきゃならんのか」というものまでいろいろ存在しますし、ネット炎上に参加する人々がみんな同じ動機で参加するわけではないのですが、大まかな傾向として理解しておくと対策をイメージしやすくなると思います。

 

なお、上記の山口先生の調査は、炎上の対象となっているのが企業・団体の場合だけでなく、芸能人・有名人などを対象としたケースも含まれていますので、自社の対策を考えなければならない企業人が全て鵜呑みにして良いとは限りません。

 

というのも、企業のケースに比べて芸能人や有名人についてのネット炎上は、シャーデンフロイデと呼ばれる心理が働いているケースも多々あるように思われるからです。

つまり、芸能人や有名人を対象としたネット炎上は、表向きの批判内容がいかなるものであれ、本音としては相手を引きずり落とすことに快感を感じるというケースが少なくない可能性があります。(もちろん、そうではないケースもあると思われますが。)

 

他方、企業が対象とされるネット炎上は、このシャーデンフロイデは念頭から排除した方が良いでしょう。 

  

企業のネット炎上ではどうなのか 

そもそも、企業体というのは、生身の人格を持ちません。

例えば、一流大企業の名物経営者がハレンチ罪で逮捕された、などということが発生すれば「芸能人・有名人」を叩くのと同じ心理が発生しやすい状況となりますが、それが「企業ぐるみでその経営者のハレンチ行為をバックアップしていた」などということでもなければ「企業」そのものを叩くということにはならないでしょう。

 

シャーデンフロイデは「妬み」という感情と密接な関係があるのですが、人は「企業」という顔の見えない存在に対して強い「妬み」を持つほどの執着はできないものです。(日本最大手の広告代理店のように、巷間においてある種の人格化がされているようなケースも例外的に存在しますが。)

 

企業が対象とされる場合、特定の個人が逆恨みをするなどしてメチャクチャないいがかりをつけたり、嘘の告発をするなどしても、それを見た他のネットユーザーの共感や賛同を得られず、「炎上」どころか「拡散」にも至らず、ともすれば、いいがかりや嘘の告発をした人が逆に他のネットユーザーからの非難を浴びて沈黙せざるを得ない状態になるなど、ネット内での自浄効果が働くことも多いです。

 

つまり、ネットの声(特に批判的な声)は玉石混淆ではあるものの、それが拡散しネット炎上に至るようなケースでは、「特殊な一部の人たちによる極端な意見の暴走」などとタカをくくってはいけないと考えるべきでしょう。

 

 

 

 

参考文献:

 

中野信子『シャーデンフロイデ

 

田中辰雄、山口真一『ネット炎上の研究

 

山口真一『炎上とクチコミの経済学