ソーシャルメディア時代のリスクマネジメント

ソーシャルメディア関連を専門とするリスクコンサルタントが、企業のリスクマネジメントについて書いています。

ネット炎上には、削除依頼ではなくアカウンタビリティ(説明責任)で

「某掲示板に自社の内部情報が書かれている」「自社への謂れのない中傷がTwitterに書かれている」という状況になると、その企業の意向としては、当該投稿を削除したいと考えるのが自然です。

実際に、「削除したいのだけれど、どうしたらいいだろうか」「削除依頼をすることで、却って騒ぎが大きくなったりしないか」などのご相談をいただくこともあります。

 

私は弁護士ではないので、そのような個別のケースの最適解をアドバイスする立場には無いのですが、一般論をお伝えしつつ、ご自身で対応するのが難しい場合は弁護士にご相談されるようにお話しています。

 

その際、常に削除依頼を出すべきなのか、というと話は別です。

 

ネット炎上時こそ、説明責任を果たすべし

例えば、企業がネット炎上の対象となった場合、ネット上に書き込まれる内容には憶測やデマも含めて虚実ないまぜの情報が入り乱れることになりますが、企業としては炎上の最中にその個別の投稿について「これは虚偽だ」と削除依頼をするべきなのでしょうか。

結論としては、「否」です。

 

ネット炎上において最も悪手なのは、都合の悪い情報を隠蔽することです。

「隠蔽」かどうかは見ている側が決めることなので、企業が「隠蔽」を意図して削除依頼をしたのでなくても、炎上の最中に削除依頼をすることは「都合の悪い情報に蓋をしようとしている」、つまり「隠蔽」と受け止められるのが必定です。

特に、ネット炎上中にDMCA申請による削除依頼をするなどして「濫用である」という指摘がなされ、却って炎上騒動を大きくするというケースが、過去に複数存在します。DMCA濫用については、後日あらためて別な記事で説明します。)

 

2018/1/16追記:

DMCA濫用について記事を書き起こすつもりでしたが、徳力基彦さんによる優れた解説・論評がありましたので、下記リンクいたします。

Wantedly騒動に学ぶ、ネットの悪評を削除するリスク | AdverTimes(アドタイ) by 宣伝会議

 

では、ネット炎上に至ってしまった場合、企業としては虚実ないまぜの情報がネット上で錯綜するのを指を咥えて眺めていることしかできないのでしょうか。

これも、答えは「否」です。

 

なぜなら、企業側は個別の投稿に対処するのではなく、情報を開示して消費者の不審や不信の払拭に努めるべきだからです。

情報を積極的に開示することで、何が正しくて何がデマなのかを広く一般に知らしめることが、その瞬間の炎上対策として有効なだけでなく、ネット炎上鎮火後の再起動にも必要なことなのです。

なお、現状の開示だけでなく、今度どうしていくのかの善後策まで発表できれば尚良いのですが、善後策まで決めてから発表するのでは対応が後手に回るので、まずは情報を開示して説明責任を果たすことが重要です。

 

その際、これの前提として必要になるのは、ネットでどんな風説が広まっているのかを把握し、理解することです。何をどうして批判されているのかを理解すること無しには、何をどう情報開示すれば良いのかも分かりませんし、ましてや、善後策など立てられるわけもありません。

理解することなしに「とりあえず謝罪しておこう」ということでは、企業の謝罪に慣れてしまった昨今のネットユーザーには見透かされてしまいます。

 

一般企業ではなくメディアの炎上では、すでにこのような事例も発生しています。

 

「週刊SPA!」の炎上騒動 抗議の学生らが扶桑社に改善要求へ - ライブドアニュース

扶桑社は「稚拙な記事を掲載し、多くの女性を傷付けてしまった」と謝罪しました。これに対して、署名を呼び掛けてきた大学生らは騒動を収めるための表面上の謝罪に過ぎず、女性蔑視という根本的な問題を理解していないとして、改善を求めるため、午後に扶桑社と話し合う予定です。 

つまり、理解することなしに型通りの謝罪をしても、それは誠意ある対応とは受け止められなくなりつつあるのです。

 

とはいえ、「ネットの書き込み」といっても、多くの人から共感されるようなものから、誰からも無視されるような無理筋まで、様々です。それらの言説を同等に扱っているとキリがありません。

このため、

 

  • どのような言説が存在するのか
  • その言説はどれぐらいの人に支持されている(ないしは、されそう)なのか

 

という2点を把握して、対応すべきものとそうでないものとの切り分けを行い、対応すべきものには情報の開示と説明責任を果たさなければなりません。

 

説明責任を果たす難しさ

前述ような対応をすることについて、昭和の感覚からすると、

 

  • ごちゃごちゃ言わずに潔くひたすら謝る方が良い。
  • ヘタに説明すると却って誤解を招くなどしてツッコミどころを作ってしまう。

 

という反対意見が出るかもしれません。

その反対意見は、マスコミというある程度限られたプレイヤーと対峙したり、個別の顧客に対応する場合には有効なロジックかもしれませんが、ソーシャルメディアのように不特定多数が相互に影響しあって発言を増幅させていくソーシャルメディアにおいては全く役に立たないだけでなく、消費者からの反感すら買いかねません。

 

といっても、実際に、情報を積極的に開示して十分な説明責任を果たすというのは、なかなか難しいことではあります。

企業としてのガバナンスだけでなく、コミュニケーション能力も求められることになりますし、法律で決まっていることでもないので、どこまで説明すれば十分なのかのガイドラインもありません。企業は、そのような事案に臨機応変に対処するのを苦手とすることが多いですから、何の準備も無いままにいざ「炎上した!」となってしまうと、なす術がありません。

 

では、どうすれば良いのか。

それは、平時から体制づくりをしておくしかありません。

 

 

体制づくりについては、また別な記事で改めて。