ソーシャルメディア時代のリスクマネジメント

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タニタカフェの公式発表に対する残念な誤解と、その原因について

経緯

体重計のメーカーとして有名なタニタの子会社が運営するタニタカフェ長岡店において開催されているイベントに関連し、トラブルが発生しました。

端的にまとめると、店舗スタッフがイベントグッズを不正に入手し、それをフリマサイトで転売していたことが発覚した、ということです。

 

そのイベントグッズとは、タニタカフェ長岡店にて行われている「ヒプノシスマイク×TANITA CAFE」で販売されている缶バッジでした。

この缶バッジは全部で16種類あり、カプセルトイのようにどれが購入できるかわからない状態で購入するという仕掛けで販売しており、その内の4種類は「シークレット」と呼ばれる、出現率の低い缶バッジだったそうです。

 

発覚のきっかけは、この出現率の低い4種類が全て、あるフリマサイトで1人の出品者によって販売されていたことです。

出現率の低い缶バッジを4種類全部1人で入手できている、ということから、「そんなに簡単に手に入れられないものを、おかしい。不正な手段で入手したのではないか。店舗スタッフによる横流しではないか。」と、フリマサイトユーザーの憶測を呼び、話題に上がりました。

 

これを受けて運営者であるタニタヘルスリンクは店舗スタッフに聞き取り調査などを行い、28日に不正は確認できなかった旨の発表をしました。

「ヒプマイ」グッズ“転売疑惑”でタニタ子会社が調査結果報告 「不正行為は確認できず」 - ねとらぼ

タニタヘルスリンクの公式発表(2019年2月8日)

 

その後、やはり店舗スタッフが不正に入手していたことが判明し、先の公式発表の6日後の214日に改めてその旨の発表を行いました。

タニタ子会社、販売スタッフの不正入手公表し謝罪 「ヒプノシスマイク×タニタカフェ」レア缶バッジ転売騒動 - ねとらぼ

タニタヘルスリンクの公式発表(214日)

 

ここでポイントとなるのは、28日の発表ではあくまで、確認した範囲では不正が見つからず、引き続き調査を進めていく、という途中経過報告でしかなかったにもかかわらず、報道を見たネットユーザーの中には「不正は無かった」という発表であると誤認する人が一定の割合で存在していたことです。

 

結果、28日のコメントを「不正は無かった」と理解してしまった人にとっては、その後の「不正を突き止めました」という発表について、「不正は無かったと言いましたが、やっぱり有りました」という内容に見えてしまい、タニタヘルスリンク側の発表が二転三転してしまっている(あるいは、いったん不正を隠蔽しようとした)ように感じてしまったのです。

(実際は、28日の発表は「今のところ確認できていないけれど、引き続き調査します」という中間報告であり、その後の発表は「ちゃんと突き止めました」の報告なのですが。)

 

せっかく、企業として真っ当な対応をしているのに、誤解から誠意を疑われるような状態になってしまったことは、非常に残念でなりません。

 

なぜこのような誤解が生じてしまったのか

このような誤解が生じてしまったのは、

 

  • ネットでは記事のタイトルに着目するばかりで、本文はよく読まない人が多い。(そういう人は、公式発表のコメントを直接確認することはしない。)
  • 「不正は確認できなかった」と「不正は無かった」の違いが分からない(読解できない)人が一定存在する。

という、2つの不幸な要因が重なった結果であろうと思います。

 

1つ目については、かなりの割合の人がインターネットで流れてくる大量の情報に対峙する際に、このように接しているのではないかと思います。そうでもしないと、情報に溺れてしまうからです。

逆に、情報を発信する側は、そのような読まれ方をするということを念頭に置いて発信しなければなりません。

 

2つ目については、簡単な文章の意味を理解することができない人がかなりの割合で存在することが、新井紀子さんの『AI vs 教科書が読めない子どもたち』や、橘玲さんの『もっと言ってはいけない』などでも詳らかにされているところです。

 

28日のタニタヘルスリンクによるコメントは、ビジネス文書としては非常に真っ当であり、これを上から下までしっかり読んだ上で、それを理解できる日本語力が有れば誤解を招くようなものではありません。が、この長さのビジネス文書を読解する力が無い人には、内容が届かないということでもあります。

 

今回のタニタヘルスリンクの態度は、企業として誠意ある姿勢であると思います。

にもかかわらず、事実に反して、一部のネットユーザーから「不正をいったん隠蔽しようとした」というような誤解をされてしまったことは、大変残念でなりません。

 

誤解を防ぐためには

このような誤解を防ぐためには、28日の発表をメディアで取り上げてもらう際に、これが調査途中であることを端的に伝えてもらえるようにコメントの書き方を工夫する他ありません。

(たとえば、コメントのタイトルや冒頭で、できる限り明確に「現在も調査中」の旨を記載するなど。)

 

真っ当な対応をしたにもかかわらず、誤解から信頼を失ってしまうのは、あまりにも残念です。

このような悲劇を生まないためにも、公式コメントはメディアがどのように取り上げるかも念頭に置いた上で作成する必要があるでしょう。

 

 

(余談)

AI vs 日本語を読めない子供たち』の著者である新井紀子さんのTwitterでの発言が元で賛否両論の議論の嵐が巻き起こった際、新井紀子さんとは全く無関係の小説家である新井素子さんに対して批判をする人が現れました。

https://twitter.com/motoken1989/status/1092387219212357632

これこそまさに、大量に流れてくるネットの情報を、人がどの程度の精度でインプットしているのかが分かる事例と言えましょう。