ソーシャルメディア時代のリスクマネジメント

ソーシャルメディア関連を専門とするリスクコンサルタントが、企業のリスクマネジメントについて書いています。

【ソーシャルリスクマネジメント体制を作れ!】その4 従業員の不満に着目せよ

「ソーシャルリスクマネジメント体制を作れ!」も第4回となりました。

 

前回は、顧客の声に耳を傾けて事業を改善する、ということを述べましたが、今回は、ソーシャルメディア上での「従業員の声」に耳を傾けるということをお話ししたいと思います。

 

なお、本稿は、本社の他に全国(ないしは、世界)に支社や支店、営業所、工場など、複数の地方拠点が存在するような企業を想定して書いています。

また、主に内部統制関連の課題にフォーカスした内容です。

 

内部統制上の問題に向き合う

昨今はブラック企業に対する強い忌避感から、パワハラ、セクハラ、サービス残業などの風評が立つと、企業として大きなダメージを負うことになりますし、場合によっては労基署による指導や従業員による訴訟に発展する可能性もあります。

そのような社会背景を踏まえ、多くの企業が内部統制の強化を試み、従業員の労働管理(残業時間の超過が発生していないか、残業申請をせずに残業していないか、パワハラやセクハラなどのハラスメント問題は発生していないか、等々)に苦心していることと思います。

 

また、ガバナンスの問題は労働問題だけではありません。

内部情報の流出、内部告発といった、労働問題だけでないリスクも存在します。

 

企業の経営陣や管理部門においては、これら労働問題や内部告発などが自社に存在しているか否か以前に、反射的に「仮に存在していたとしても表に出ないようにしたい」という意識が先立つでしょう。

しかしながら、それは無理なことです。なぜなら、もしそれが存在するなら、ソーシャルメディア時代においては隠しようが無いからです。(ソーシャルメディア時代のリスクマネジメントは、このリアリズムを受け入れるところから始まります。)

 

たとえば、従業員にソーシャルメディアの利用を禁止しようとしても、それを徹底する方法はありませんし、そもそもプライベートにおいてソーシャルメディアの利用を制限することは労使契約の妥当性を欠くことになるでしょう。

また、会社に関連することに限定してソーシャルメディアで発信しないよう就業規定を設けたとしても、それが徹底される保証は全くありません。仮に、Twitter上で自社の従業員であることが疑われる投稿を発見しても、その投稿をした実際の従業員個人を特定することができるかは簡単ではありません。(プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求が認められなければ、過去の投稿内容をたどって手がかりを掴むしかありません。)

 

このような点を考慮した場合、「発信するな」という教育をするよりも、そもそもガバナンス上のリスクになるような状態(パワハラ、セクハラ、サービス残業、過重労働などなど)が発生しないように管理し、問題の根本解決をすることが先決ではないでしょうか。

 

本社から離れている拠点でのガバナンスを如何にせん

これらの問題の根本解決、つまり、ガバナンスの行き渡った状態を実現しようとした場合、ガバナンス担当者の直接目の届く範囲であれば比較的容易です。が、遠方にある支社や営業所、工場などでそれが徹底されるようにするにはどうしたら良いか、心配のタネは尽きません。

場合によっては、目が届かないのをいいことに、ガバナンスを軽視した状態が日常化している支店があるかもしれません。そのような場合には、実態を内部監査で発見することも意外に難しいものです。

 

では、どうすれば良いのか。

 

例えば、匿名で発信できるインターネットサービス(主にネット掲示板)で、自社に関してどのような話題が書かれているのかを調査しましょう。

その結果として、虚実ないまぜの噂や暴露話などが見つかる場合があります。社内の人間が書いているとしか思えないような内容も見つかることがあるでしょう。それらの投稿自体をどう処置するのか(放置するのか、削除依頼を出すのか)などは弁護士にご相談いただくのが良いと思いますが、それと併行して、その情報をインプットとして活用するということも視野に入れてみてはいかがでしょうか。

 

もちろん、匿名掲示板の投稿などは虚偽も多く、そのまま鵜呑みにはできません。

ですが、あまりに特定の支店についての不満や告発が多いようであれば、その支店において何らかの問題が生じている可能性も捨て切れません。(もちろん、火のないところに煙を立てるヤカラも居ますので、くれぐれも鵜呑みにしないことが重要です。)

 

実は以前、ある食品メーカーの商品の異物混入問題によってネット炎上が発生した際、そのメーカーの工場がいかに不衛生であるかの暴露話が、炎上が発生する半年前に匿名掲示板で書き込まれていたことが発覚して話題になったことがあります。

その書き込みが真実に基づくものであったか、それともデマだったのがたまたま実態に符合したものであるのか、確認のしようは有りません。ただ、このように、社内に問題があれば匿名掲示板に書き込まれるということは発生しがちなことです。

 

匿名掲示板で自社に関する暴露話を発見した場合、これを

「誰が書き込んだんだ、けしからん!」

と犯人探しをする前に、それを機に、暴露されてしまうような宜しくない実態を改善するということに労力を向けるのが内部統制上も事業上も有意義ではないでしょうか。

 

調査の結果、その書き込みが完全にデマであることが判明した場合には、投稿者を炙り出して毅然とした態度で臨むことも重要です。(具体的にどのように「毅然と」するのかについては、ネットトラブルに強い弁護士にご相談いただくのが良いと思います。)

 

 

 

さて、今回までは、リスクマネジメントに資する情報をソーシャルメディアから収集する際の着眼点について述べてきました。

次回からは、ソーシャルメディアから得た情報を、どのようにリスク評価すべきなのかについて述べていきたいと思います。