ソーシャルメディア時代のリスクマネジメント

ソーシャルメディア関連を専門とするリスクコンサルタントが、企業のリスクマネジメントについて書いています。

炎上しやすいネタとは

前回は、炎上の対象を

「有名人・芸能人型」

「メディア型」

「一般人・企業型」

の3つに分け、「一般人・企業型」と他の2つとでは炎上傾向が異なることから、企業は「一般人・企業型」の炎上に気をつけていれば良い、というお話をしました。

 

今回は、前回の内容がやや抽象的であったことを受け、具体例を交えながらより詳しく、それぞれの「型」ごとの炎上しやすいネタについて掘り下げていきたいと思います。

 

「有名人・芸能人型」の炎上

有名人・芸能人は、普段から多くの人の耳目を集めますし、多くの人の耳目を集めることが仕事として非常に重要な要素です。

この「多くの人」の中には、ファンもいればアンチもいます。一般的には、ファンの裾野が広がれば広がるほど、アンチも増えます。

また、活動の露出が増えれば増えるほど、ファンでもアンチでもない人へのリーチも増え、結果、コンテクストを共有していない「多くの人」の目に触れることにより、ボタンの掛け違いのような齟齬が生まれやすくなります。

 

このような状況を指して、タレントの有吉弘行さんはかつて、再ブレイクを果たした直後の時期に

「ブレイクするっていうのはバカに見つかるってことなんですよ。」

と語っています。

表現の仕方は、ちょうど毒舌キャラで再ブレイクした直後だけあって不穏当ではありますが、つまり、コンテクストを共有していない人にまでリーチの裾野が広がり、結果として、トンがったことを言えば顰蹙を買ったり批判を受けたりする、という状況をこのような言葉で表しています。

 

また、有名人・芸能人は、一人の人間としての人格を持っていますから、企業や団体のようなそれ自体が人格を持つわけではない存在とは異なり、生活があり、感情があり、知見の限界もあり、場合によっては口が滑ることもあります。

人間はそういった文脈の中では様々な矛盾も抱えながら生きているわけですし、誰であれツッコミどころなどはいくらでも生じてしまいます。

 

ソーシャルメディアがが社会インフラとして定着する以前であれば、例えば芸能人がテレビで口を滑らせたとしても、そのシーンを見ていた一部の人の間で話題になるだけで、情報としてストックされるケースは非常に稀でした。それに対して、ソーシャルメディアが一般化した今、たとえばテレビ番組はキャプチャされ、ラジオ番組は書き起こされ、その番組を直接視聴していた人以外にも広まります。それに加え、芸能人本人がソーシャルメディア上で発信するなど、有名人・芸能人の一挙手一投足が可視化され、ログとしてネット上に留め置く機能を持ちますので、より広い範囲に、ワンタイムでなく継続的に共有されます。

しかも、その共有された情報に対する一般の反応も、ソーシャルメディア上にストックされ、可視化されます。この可視化された「一般の反応」が批判だらけであれば、それが「ネット炎上」と見なされます。

 

そのような炎上の端的な例を挙げると、タレントでモデルのローラさんが、辺野古の米軍基地移設や動物愛護に関する政治的発言を行ったということで、賛否両論交えた大きな話題を呼びました。

ローラの“政治的発言”はタブー? テレ朝報道に異論相次ぐ | 女性自身

ローラさん、辺野古基地をめぐる発言が波紋。芸能人は黙っていた方が良いの? | ハフポスト

 

企業の場合、こういった燃焼性の高い話題に関して見解を表明するということはかなり特殊なケースですし、表明する必要もほぼありませんから、このようなケースはまさに有名人・芸能人に特有な炎上のパターンです。

なお、もし大企業の幹部などが実名でこのような燃焼性の高い話題に関して発信すれば、それは結果として「有名人・芸能人型」に近い様相を見せる可能性があります。

 

「メディア型」の炎上

メディア(特に地上波テレビ放送や大新聞)は、公共性の担保が強く求められます。この「公共性」の中には「中立性」や「倫理性」も含まれており、それをメディアが踏み外すと炎上に至るケースが多々あります。

もっとも端的にそれが現れるのは、報道において事実の歪曲や隠蔽などの欺瞞行為があった場合です。

 

アメリカ大統領選挙で大きな問題になったフェイクニュースに対する一般のインターネットユーザーの警戒感や危機感は、一部で非常に強まっています。このため、マスメディアが発信する情報に対して、ソーシャルメディア上で有識者がファクトチェックをするということが頻繁に行われており、欺瞞のある報道内容については徹底的に追求される様子が頻繁に見受けられます。

もちろんこのようなファクトチェックはマスメディアに対してばかりおこなわれるのではなく、ネットメディアについても同様に向けられます。その結果として閉鎖に追い込まれたのが、DeNAが運営していたWELQなどの9つのネットメディアです。

「炎上」が暴いたDeNA劣悪メディアの仕掛け | 「WELQ問題」の本質とは何か | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

 

また、倫理という点に着目すると、2017年、フジテレビのバラエティ番組「とんねるずのみなさんのおかげでした」において、同番組において30年前に人気を博していた「保毛尾田保毛男」というキャラクターを登場させ、それがLGBT差別であるという批判を受け大炎上に至ったケースがありました。

保毛尾田保毛男騒動、フジテレビが謝罪文【全文】 | ハフポスト

 

30年前と現在では、求められる倫理観に大きな変化が生じているのは確かで、それに思いが至らなかった番組制作サイドの失策であることは、炎上時にも多くの論者が指摘したとおりです。

 

このような炎上から、一般の企業が見出すべき教訓というのは、直接的には多くないでしょう。もちろん、エンタメ系の企業がコンテンツやサービスを作る上では重要な視点なのですが、それは「企業」としての視点よりも「メディア」としての視点が必要だというだけのことです。

 

「一般人・企業型」の炎上

便宜上、「一般人」と「企業」についてひとまとめにしていますが、前回も触れたとおり、本稿では「一般人」に特化したお話をしません。あくまで本ブログの企図するところは、企業としてリスクにいかに備えるかについてお話しすることにありますので、企業と無関係の一般人に関する炎上について詳らかにするのは不要であると考えています。

(「有名人・芸能人」「メディア」は関係あるのかというと、状況は限定的ながら関係します。それについてはまた後ほど。)

 

ここで、芸能人やメディアと一般企業との違いを明確にするために、下記の表をご覧ください。

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前回も触れましたが、端的に「Watcher」の多寡による違いがあります。常日頃からウォッチしている人が多ければ着火しやすく、少なければ余程のことでない限り炎上には至りません。

 

では、その「余程のこと」とは何でしょうか。

それは、見るものの正義感情に訴えかけるようなこと、つまり、当該事項に対して批判・非難をすることで、自身の正義感情を満たすことができるような話題です。(以前の記事でも述べたとおりです。)

当然、企業とすれば、様々な意味で「悪いこと」をしないようにしているでしょう。少なくとも、自分が悪役になるようなことは最大限回避しようとするはずです。にもかかわらず、炎上してしまうのは何故なのか。

それは、企業側の姿勢として以下の3点に集約されると考えられます。

 

  1. 都合の悪いことを誤魔化したり隠蔽できると思っている。
  2. 昭和的道徳観からアップデートできていない。
  3. 不特定多数を想定したコミュニケーションのスキルが不足している。

 

以上3つの中に、バイトテロは含まれません。バイトテロについては以前の記事でも述べたとおり、企業側として完全にコントロールできるものではありませんので、企業としてコントローラブルな点に議論を集中させる意図で、上記3点に論点を絞りたいと思います。

 

今回はここまで。

 

次回は上記3点について、より深掘りしていきたいと思います。