ソーシャルメディア時代のリスクマネジメント

ソーシャルメディア関連を専門とするリスクコンサルタントが、企業のリスクマネジメントについて書いています。

企業の体質の結果生じてしまうネット炎上

前回は、ネット炎上の対象を

「有名人・芸能人型」

「メディア型」

「一般人・企業型」

の3タイプに分けた際の、それぞれのネット炎上の違いを具体的に掘り下げていきました。

その中で、企業が対象となるネット炎上が発生してしまう真の原因として、以下の3点を挙げました。

 

  1. 都合の悪いことを誤魔化したり隠蔽できると思っている。
  2. 昭和的道徳観からアップデートできていない。
  3. 不特定多数を想定したコミュニケーションのスキルが不足している。

 

今回から3回に分けて、この3点をより深掘りしていきたいと思います。

 

なお、この3点に起因して発生した問題は、以前の記事「レピュテーションリスクには、ランクがある」において「ランク3:企業の姿勢や体質の問題」に相当する可能性が非常に高くなり、レピュテーション上のダメージが後を引きやすくなってしまいます。

このため、ネット炎上に至ってから慌てて対処するのではなく、炎上に至る前に(炎上に至らないように)自己点検、自己改善を進めなくてはなりません。(本稿もその取り組みを手助けできるようにという観点から書いています。)

 

「都合の悪いことを誤魔化したり隠蔽できると思っている。」とは

まずは1つ目の「都合の悪いことを誤魔化したり隠蔽できると思っている。」について。

 

ここでいう「誤魔化し」や「隠蔽」は、表沙汰にならないようにもみ消す、というような積極的な場合ばかりでなく、「このまま放置しても多くの人の目に触れることは無いだろう」という消極的な意味での隠蔽(不作為の作為としての隠蔽)も含まれます。

 

確かに、もし社内に問題が存在したとしても、その問題自体が表沙汰にならなければ、レピュテーションの悪化によるダメージを引き受けなくて済みます。言うなれば、「バレなきゃ平気」ということです。

実際、表沙汰にならずに済んだ、というケースもあるでしょう。特に、ソーシャルメディアが一般化する以前は表沙汰にならずに済んだケースも多かったのではないかと想像します。

しかしながら、ソーシャルメディアが一般化した現在、都合の悪いことを隠し続けるのは非常に難しくなっています。

 

というのも、ソーシャルメディア時代以前であれば、「誤魔化し」や「隠蔽」に気づいた人がいたとしても、それを世間に知らしめる方法は、マスメディアに持ち込むぐらいしか方法がありませんでした。その場合、マスメディアが報じてくれるかどうかは全くの不明です。

それが、ソーシャルメディアが一般化した現代では、マスメディアに持ち込むまでもなくソーシャルメディアに書き込むという手段が多くの人に開かれていますので、世間に知らしめる間口が相対的に大きくなっているのです。その書き込みが多くの人に閲覧され、拡散されることで炎上に至るケースが、これまでいくつも発生しています。

 

極端な例え話をすると、何らかの悪徳商法が存在し、ある人が被害に遭ったとします。

ソーシャルメディア時代以前であれば、被害者は弁護士や警察に相談し、少ない手がかりを頼りに他にも同じような被害に遭っている人がいないかを探しつつ、刑事や民事での訴訟を検討し、他にも被害者がいることが分かれば被害者の会を設立し、その規模が大きければマスコミが話題として取り上げたりしてくれるかもしれない(けれど、継続的に報道し続けるわけではない)、という流れであったろうと思います。

これに対し、ソーシャルメディアが一般化した現代であれば、「こんな酷い目に遭った」ということをソーシャルメディアに書き込めば、同じ被害に遭った人がその書き込みを見つけてくれる可能性は十分に存在しますし、それが拡散され、多くの人の目に触れる可能性も高いわけです。

 

このような消費環境にあっては、かつて(たとえば昭和の頃などに)存在していた企業と個人の情報の非対称性はかなり小さくなっていると言えるでしょうし、企業はそれを前提にガバナンスを構築しなければなりません。

それは、表沙汰にならないことを前提にして施策を決定する(≒万が一表沙汰になったら土下座で乗り切る)という脆弱性の高いマネジメントではなく、「表沙汰になって困ることをできるだけ減らしていく」(企業の経営で真っ白は難しいでしょうから、ゼロにしろとは言えません)というマネジメントが必要だということです。

 

ただ、経営陣が「これまでこれでやってきたんだから、これで大丈夫だ」という確証バイアスに囚われている場合、現場からのボトムアップで覆すのは困難だろうと思います。

そのような場合は、有志が自身の権限の範囲で始められることから着手するしかありません。例えば、低予算で始められるソーシャルメディアのモニタリング(=定常的な自社のエゴサーチ)をおこない、どんな評判が立っているのかを上司と共有するところから始めてみるなど。

実態を把握し共有することで、危機感の輪を広げていくことが、ボトムアップの第一歩となるでしょう。

 

ただし、このやり方は非常に不確実ですし、時間もかかります。

経営陣の意識が変わるよりも、市場からNOを突きつけられる方が先になる可能性があります。その場合、「レピュテーションリスクには、ランクがある」のランクに照らした場合、確実にランク3以上となるので、大きなダメージを負うのは確実です。

 

本来ならば経営陣がこのリスクを受け入れ、会社としてのリスクマネジメント体制を整えたり改善したりしていく中に組み込む課題としていくことが望ましいでしょう。

(参照:本ブログ「ソーシャルリスクマネジメント体制を作れ」)

 

今回は、企業が対象となるネット炎上が発生してしまう真の原因の1つ目について詳しくお話をしました。

 

次回は2つ目について掘り上げていきたいと思います。